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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナで見えてきた日本の看護の課題 「真の急性期」に手厚い看護態勢を 看護学生の臨地実習 今こそ教育の機会に

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森山美知子・広島大学教授に聞く

新型コロナで見えてきた日本の看護の課題 「真の急性期」に手厚い看護態勢を 看護学生の臨地実習 今こそ教育の機会に

 「日本は人口当たりの看護師数は世界的にも高い水準なのに、病床数が多いために広く薄く分散しており、コロナのような緊急事態に対応できない」「諸外国ではコロナ下でも、看護学生の臨地実習を止めていない。日本でも看護学生の実習に取り組むべきだ」――。

 新型コロナウイルス感染症の流行によって日本の医療が抱える様々な課題が露呈しています。コロナ医療の現場の中核となる看護師不足の問題もそのひとつです。「コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会」の一員である広島大学教授(成人看護開発学)の森山美知子さんは、日本の看護師配置をめぐる構造的な改革の必要性に加え、コロナ下でも看護学生が現場で学べる教育の機会を確保すべきだと話します。(聞き手・田村良彦)

看護師が広く薄く分散 ぎりぎりの人数で運営

――森山さんは、有識者による「コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会」の一員として、今月発表された提言の中でも、「なぜ看護師をコロナ対応に異動させられないか」と、日本の看護が抱える根本的な課題を指摘されました。

 日本の人口当たりの看護師数は、世界的にも高いレベルにあります。しかし、病床数が多いことから、広く薄く分散してしまっています。精神病床や療養病床にも多くの看護師が配置されており(病床数はそれぞれ全病床の約20%:令和元年医療施設(動態)調査)、命に関わる重症な患者を受け入れる「真の急性期病床」の看護師は決して多くありません。

――診療報酬で最も高い急性期病床では看護師1人当たり7人の患者をみる7対1看護ですが、海外ではどうなのですか。

 アメリカやオーストラリアでは、4対1や5対1などと日本より高い看護配置基準があります。その上、資格を持った看護補助者が看護師と同じくらいの人数いて、日本では看護師がやっているような仕事をしています。

 日本ももっと増やすべきです。ただし、今の「一般病床」全体の配置基準を引き上げると大変なことになりますので、「真の急性期」に重点的に看護師を手厚く配置することが必要です。

――コロナ医療では、患者のケアにあたる看護師さんの疲弊や、病床を増やすうえでどう看護師の数を確保するかが課題になっています。

 日本は約8割が民間病院であり、経営的にもギリギリの看護師数で運営しており、難しい面があります。また、診療報酬上も病床の種類ごとに配置基準が決められており、病床の種別を超えた異動も困難です。

 EU諸国やアメリカでは、計画手術など緊急を要しない治療を止めて、外科病棟や手術室の看護師などをコロナ対応のICU(集中治療室)に異動させました。アメリカではパートタイムの看護師や各地の病院を移動しながら働く看護師などがコロナ病床での勤務を申し出るなど、多くの看護師が率先して対応しています。

 アメリカやスペインなどでは、救命救急センターに多くの看護師が働いていることも、非常事態におけるバッファ(緩衝剤)になっていると考えます。日本では普段どこもギリギリの人数でやっているため、いざ今回のコロナのようなことが起きると、とたんに破綻してしまいます。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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「勉強は大事です。でも、高校時代の一日は大人になってからのひと月分よりはるかに貴重な日々ですよ」。昔の漫画にあった言葉です。教育神話の諸々もありますが、一方で、教育は育成と選抜でもありますし、成長を待つ作業でもあります。心から望む一部の人間は特定の行為をやらせればいいですが、体も心もまだできあがっていない人間の学徒出陣に何を期待しているのでしょう? また、海外の事例もどこまでも正しいわけではありません。率直に言って、これまでの大人の判断やシステムのミスを、若者や何とかに押し付け過ぎるべきではないでしょうし、不慣れな人間を現場投入してもクラスターや事故が増えて、ますますカオスになるのは、医療崩壊を宣言した町が、どれだけの医療事故を不適切に処理してきたかのニュースと重なります。新しい時代をつくるのは老人ではない、なんて有名な言葉もありますが、青少年に我慢も強いねばなりませんが、彼らが心身共に学ばないと、新型コロナやそれ以外の問題との中長期的な闘いではやっていけないと思います。急性期医療は、真の急性期ともいえる事故や急性期の患者だけでなく、慢性疾患の急性変化やそれらの見落としを含みます。トリアージの記事もありますが、医療のワークフロー全体の見直しも大事です。いまだに休みなしなのかも知りませんけど、看護も医療も課題は指揮官の前時代的頭脳です。

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