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宮脇敦士「医療ビッグデータから見えてくるもの」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ流行下で赤ちゃんや母親への予期せぬ「良い」影響とは

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不安やストレスによる悪影響が心配されたが

新型コロナ流行下で赤ちゃんや母親への予期せぬ「良い」影響とは

 前回に引き続き、ビッグデータからわかった新型コロナウイルスの影響について話していきたいと思います。

 新型コロナウイルス感染症の流行は、社会に大きな影響を与えました。現在、感染拡大開始から1年以上が過ぎ、変異株の流行、繰り返される緊急事態宣言、ワクチン接種の遅れなど、暗くなるニュースばかりですが、一方で、前回お話ししたように、小児の感染症やけがをはじめとする入院が減るなど、皆さんの感染対策によって良い面が表れたことも確かです。

 ここでは、もう一つ、新型コロナウイルス感染症流行の、初めの頃に起こった興味深い現象をご紹介します。

 新型コロナウイルスが流行し始めた当初、未知のウイルスの流行だったために、医師の間では、妊産婦さんや生まれてくる赤ちゃんに悪い影響が出るのではないか、という危惧がありました。

 2016年に、リオデジャネイロオリンピックが行われたブラジルで、「ジカ熱」という感染症が流行しました。新生児の「小頭症(頭が小さく生まれてくる病気)」の危険性などが心配され、WHO(世界保健機関)が緊急事態を宣言したことを覚えている人もいるかもしれません。

 そういうわけで、新型コロナウイルスも同様の影響を引き起こすのではないかと危ぶまれたのです。

 未曽有のパンデミックを前に、妊産婦のみなさんが感じる不安や強いストレスが、お母さんや生まれてくる子どもに悪い影響を与えてしまうのではないかとも、心配されていました。特に、早産、低出生体重(小さく生まれてくること)、死産、などの赤ちゃんへの影響が非常に大きく心配されました。

 しかし、感染拡大から数か月たって、デンマークやオランダ、アイルランドから出てきた初期の報告は、なんと、逆の傾向を示していたのです。たとえばアイルランドでは、2020年1~4月にとても小さく生まれてくる赤ちゃんの数が、過去19年間と比べ、73%減少したとのことでした。

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宮脇 敦士(みやわき・あつし)

 2013年、東京大学医学部医学科卒業、医師免許取得。せんぽ東京高輪病院・東京大学医学部附属病院で初期研修後、東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻にて、医療政策・応用統計を専攻し、19年に博士号取得。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室助教、UCLA医学部客員研究員を経て、23年7月から同大学ヘルスサービスリサーチ講座特任講師。大規模データを用いて良質な医療を皆に届けるにはどうすればよいかということを研究している。

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