佐藤純の「病は天気から」
医療・健康・介護のコラム
梅雨の“フライング”で起きる食欲低下、胃もたれ…防ぐには?
すっかり新緑の季節となりました。5月といえば「五月晴れ」というように晴れる日が多く、すがすがしい印象がありますが、旧暦の5月は現在の梅雨の時期にあたります。つまり、旧暦が使われていたころの5月は、雨の季節だったのです。そのころの「五月晴れ」という言葉は、梅雨の晴れ間を表していました。この言葉からも、昔の人々の5月へのイメージが今とは違っていたことがわかります。
5月の後半になると全身けだるく
現代の5月によく話題となるのが「五月病」です。大学生がゴールデンウィークを過ぎた頃から学校に興味を失って無気力な状態になったり、新入社員の若者が仕事に対する関心や意欲を急に失ったり、あるいは、早く適応しようと頑張りすぎて無気力な状態に陥ってしまったり……というように、新しい環境に適応できなくなることを指します。五月病になると、精神的な症状だけでなく、食欲不振、めまい、頭痛など、体の不調を訴える人も多く見られます。
最近は春の気持ちのいい季節が短くなって、5月も中頃になると、梅雨がフライングする感じで始まることも多く、梅雨特有の気象変化が心身の健康に影響を与えることも重なっているように思えます。梅雨どきはいつも体調を崩す、頭痛、関節痛、めまい、体がだるい、耳鳴りがする等々の症状を訴える人が少なくありません。私の患者さんにも、5月の後半になると、全身のけだるさが激しくなり、頭も胃も肩も腰も重い、顔も足もむくむ……といった状態で、気持ちも 憂鬱 になり、お天気同様に“どんより”がスタートする人がいます。
関節の痛みに湿度が影響
梅雨に悪化する症状の代表は関節の痛みです。梅雨時になると痛めている膝がシクシクしたり、股関節の痛みが強くなったりするという話はよく聞かれます。ヨーロッパ6か国の膝、手、股の関節症患者810症例を対象に、気温、降水量、気圧、湿度、風速と痛みの関係を調査した報告があります。それによると、「1日または3日間の平均湿度」と「1日の平均気温」が痛みの強さと相関していて、湿度による影響の方が気温よりも大きかったという結果でした。湿度の影響に関しての実証研究は、これまでほとんど行われていませんが、1967年にHollander博士が関節症の患者を被験者として行った暴露実験によれば、関節の痛みは、人工的な高湿度あるいは低気圧だけでは変化せず、両者を同時に負荷すると増加することが報告されています。これらの報告から、湿度が痛みに影響を与えるという考えは正しいようです。
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