Dr.イワケンの「感染症のリアル」
医療・健康・介護のコラム
新型コロナ ICUが満床で重症者も入院できず 患者が医療を受けられない 医療崩壊の真実
国民の意思を無視した五輪開催に「ノー」の声を
さて、サッカーファンはご存じと思いますが、ヨーロッパスーパーリーグという構想が起きました。少数のお金持ちのビッグクラブだけでリーグ戦やって、コロナで失った収益を取り戻そうぜ、という企画です。
しかし、各国国内リーグの伝統と歴史、なによりサポーターの思いを無視したこの企画は大ブーイング、大バッシングの憂き目にあいまして、イングランドやイタリアのクラブはこの企画からあっさり撤退、ドイツも参加せず、スペインの二つのクラブだけがこの企画に賛成しています(本稿執筆時点)。まさか、バルサとレアルだけで毎週クラシコやって収益がどうこうなるわけもなく、この馬鹿げたスーパーリーグ構想はあえなく頓挫しました。
日本も世界も苦しむコロナ禍のなか、東京オリンピック・パラリンピックは予定通り開催されようとしています。緊急事態宣言発出のために行われた菅首相の記者会見でも、オリンピックは国際オリンピック委員会(IOC)がやると決定している、と既定路線のように開催を強調していました。
報道によると,IOCのバッハ会長は選手がワクチンを接種すれば選手村は安全だ、と世界保健機関(WHO)専門家のお墨付きを受けたそうですが、これは短見です。
選手のみでオリンピックはできません。関係スタッフ、ボランティアなどすべての人々の健康が守られて初めて,オリンピックは安全に開催できます。
彼らの予防接種計画はIOCのスキーム(枠組み)に入っているのでしょうか。選手村の安全をいくら確保したからと言って(もっとも、これも確保できるかは定かではないのですが)、オリンピックやるぞー、な「ノリ」が日本全体にもたらす影響を忘れてはいけないと僕は思います。
IOC的にはそんなことは「しらんけど」なのかもしれませんが。ヨーロッパスーパーリーグなるものを企画した人たちのように、「要するに金もうけできればあとはしらん」という,スポーツファンをガン無視した態度はそこにはないでしょうか。
ファンが支持しなかったヨーロッパスーパーリーグは、現実のものにはならないでしょう。アンケート調査によると、日本の多くの方々は東京オリンピックの予定通りの開催を支持していません。
このような危機的状況下で、住民の意向を無視し、金もうけの道具としてのオリンピックを強行する権利はだれにあるのでしょう。我々はそれを看過していてよいのでしょうか。我々もまた声を上げて、このようなゴリ押しに断固としてノーという時期が来たのだと僕は思います。(岩田健太郎 感染症内科医)
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