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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ ICUが満床で重症者も入院できず 患者が医療を受けられない 医療崩壊の真実

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感染者激増の神戸市 病床拡大も焼け石に水

新型コロナ ICUが満床で重症者も入院できず 患者が医療を受けられない 医療崩壊の真実

 本稿を執筆しているのは4月23日の早朝、関西3府県と東京都が再び緊急事態宣言に入ろうという時期です。

 神戸市の人口は、だいたい150万人です。新型コロナの重症患者を診ることができる病床が20、病床全体では200程度です。そして、神戸市によると現在入院調整中の患者が1413人(!)。つまり、大多数の方は入院できないってことです。

https://www.city.kobe.lg.jp/a73576/kenko/health/infection/protection/covid_19.html

 なぜ、神戸市の感染者の大多数が入院できないのか。理由は簡単です。感染者が激増したからです。慌てて、市内の医療機関でコロナ病床を増やしましたが、圧倒的に多い感染者の前では焼け石に水、増やした病床もあっという間にいっぱいになってしまいました。

 重症患者もベッドが空いていないので入院できません。現在、集中治療室(ICU)を埋めている患者が回復して、ICUから転床するか、あるいは不幸にしてお亡くなりになったときに初めて、新規の感染者を受け入れることができます。重症化しても入院できるという保証はないのです。

 では、軽症、中等症の病床なら受け入れてくれるか。話はそう簡単ではありません。一般病床はスタッフの数もかなり少ないですし、医療機器もICUに比べるとずっとシンプルなものになります。重症患者にはとうてい対応できないレベルのものになります。

 「通常の」医療システムであれば、そこそこ軽症の患者であれば、一般病床でケアをして、万一重症化したらICUに移動する、という戦略を取ることができます。

 が、これができません。ICUがいっぱいだからです。

重症化しても治療継続できず 軽症、中等症患者の入院も困難に

 たとえ軽症であっても、重症化しそうだな、という患者さんについては入院をお断りせねばなりません。重症化しても治療が継続できないからです。よって、重症化リスクが高い高齢者や持病を持った方々は入院しにくくなってしまいます。

 重症化しても、気管内挿管してほしくない、人工呼吸器にもつないでほしくない、という意見をお持ちの患者さんもいます。こういう患者さんは、一般病床に入院できる可能性があります。

 彼らはたとえ重症化しても、治療の強度を上げてほしくない患者さんなので、ICUには移らないのです。COVID-19は重症化すると闘病期間がとても長いです。ですから、このようなしんどい治療は勘弁してほしい、という方もおいでです。そのような「集中治療はお断り」な患者さんは一般病床に入院します(ベッドがあいていれば)。こういう患者さんはDNR(蘇生はしないでほしい)という申し出を医療側にするのです。

 DNRの患者でもない、かつ重症になりそうもない患者さんは入院できるか? これも微妙なところです。なぜならば、DNRでもなく、かつ重症化しそうにない患者さんは、そもそも自然治癒(ちゆ)する可能性が高いからです。逼迫(ひっぱく)する病床において、「自然に治りそうな患者」がそこを埋めているのは倫理的には許容できない可能性があります。

 そんなわけで、本日、これを書いている時点で神戸大学病院のコロナ病床は満床です。完全に満床。ICUは重症患者でいっぱいで、隔離期間を終えて他者への感染性がなくなった患者さんは一般病床に移動してケアを受けています。

 一般病床も、かなり重症な方でDNRの方などがベッドを埋めています。隔離期間が終わってまだ退院できない患者さんは、他の病棟でケアを受けています。

 そして、病院がそのような感じでアップアップな状態なのですが、病院の外でははるかに多くの方々が新型コロナという病気に苦しみ、そして病院を受診できないという状況に怒りを覚え、不安を感じ、どうしようもない現実に歯がみをしています。実にしんどい状況です。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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