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遺伝が関係する家族性高コレステロール血症…子どもの頃から治療し動脈硬化を抑制

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 生まれつきの体質で、子どもの頃から血液中にコレステロールがたまって動脈硬化が進む病気が「家族性高コレステロール血症(FH)」です。年齢を重ねるほど心筋 梗塞こうそく など重い病気のリスクが高まるため、早期の診断と治療が大切です。(冨山優介)

遺伝絡む家族性高コレステロール血症…早めに動脈硬化抑制

  「悪玉」処理難しく

 コレステロールは、細胞膜やホルモン、脂肪の消化を助ける胆汁酸の材料になります。主に肝臓で作られ、LDL(低比重リポたんぱく)に覆われて全身へ運ばれます。LDLコレステロールが血中で増えすぎると、血管壁にコレステロールがたまりやすくなり、「悪玉」と呼ばれます。一方、HDL(高比重リポたんぱく)に覆われて、全身から肝臓に戻るのが「善玉」です。

 余分な悪玉コレステロールは本来、肝臓の表面にあるLDL受容体というたんぱく質を通じて取り込まれ、胆汁酸になります。国内に30万人以上いると推定されるFH患者の大半は、遺伝子の異常でこの受容体がうまく働きません。

 遺伝子は、父親と母親から受け継ぎます。片方の遺伝子の異常で発症する人は国内では200~500人に1人とされています。両方が異常の患者は100万人に1人とみられ、国の指定難病となっています。

 20~30歳代で、まぶた、ひざ、手の甲などに黄色い膨らみ「黄色腫」ができたり、アキレスけんが厚くなったりする患者もいます。

 動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳梗塞につながります。FH患者の場合、心筋梗塞は男性で20歳代、女性で30歳代に始まり、男性40歳代、女性50歳代で発症のピークを迎えます。

  食事改善、薬も効果

 日本動脈硬化学会の指針では、15歳以上の場合、〈1〉悪玉コレステロールの値が治療前の状態で血液1デシ・リットル当たり180ミリ・グラム以上〈2〉黄色腫がある〈3〉2親等以内の家族に、FH患者か早発性(男性は55歳未満、女性は65歳未満)の心筋梗塞や狭心症の患者がいる――のうち、2項目が当てはまればFHと診断されます。

 診断後は、生活習慣を改善し、悪玉コレステロールの値を100ミリ・グラム未満に下げることを目指します。食事は、レバーなどコレステロールを多く含むものや動物性の脂肪を避け、魚や大豆製品、食物繊維を多く取るようにします。禁煙に取り組むことも大事です。

 肝臓でコレステロールの合成を妨げるスタチン系の薬を使い、食物からのコレステロール吸収を妨げる薬「エゼチミブ」などを併用することもあります。十分な効果がなければ、LDL受容体を壊すたんぱく質の働きを抑える薬「エボロクマブ」などを使います。

 自覚症状がなくても、子どもの頃から動脈硬化は進行します。早期に病気に気づいて治療を始められるかどうかは重要なポイントです。親の悪玉コレステロールの値が高い場合は、小児科などで子どもの値を調べてみるといいでしょう。

 国立循環器病研究センター研究所シニア研究員の 斯波しば 真理子さんは「多くの場合、適切な治療で悪玉コレステロールの値はコントロールできます。子どもの頃から治療を始めれば、寿命は健康な人と大差ないという海外の報告もあり、親族や自分の数値を気にかけてみてください」と話しています。

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