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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

5か月男児を負ぶった母親の自転車が車と接触 頭から落ちて脳挫傷に

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 前回は、子どもが走っていて転んだ時のケガについてお話ししました。今回は、子どもが乗り物に乗っていて転倒した場合についてお話しします。移動エネルギーが大きいため、より重症度が高いケガになります。今回は、乳幼児編です。

5か月男児を負ぶった母親の自転車が車と接触 頭から落ちて脳挫傷に

イラスト:高橋まや

ベビーカーは「荷下げフック」に注意

 事例1:3か月女児。2019年5月。上の子の手をつないで、片手でベビーカーを押していた。ベビーカーから手を離した瞬間、ハンドルに下げていた荷物の重みでベビーカーが手前側に転倒した。シートベルトをしていなかったため、アスファルトに放り出され、頭部および顔面を打撲した。

 シートベルトをしっかりしていれば、ベビーカーが転倒しても、赤ちゃんが地面に放り出されることはありません。どんなに嫌がってもシートベルトを着用することが必要です。シートベルトは、腰ベルトだけだと抜け出してしまう可能性があるので、腰と肩も固定できるベルトを着用してください。

 国民生活センターが「ベビーカーに後から自分でつけた付属品」について聞いたところ、1000人中723人の保護者が「ハンドルに荷下げフックをつけた」と回答しています。国民生活センターが、乳児のダミー人形を乗せてゆるやかな坂を上る実験をしたところ、ハンドルに荷物をかけていないベビーカーは、転倒に至る傾斜が約17~27度だったのに対し、ハンドル部分に3キロの荷物を下げたベビーカーは、約1~12度の傾斜で転倒しました。

 電車やバスが急停止した場合に、ベビーカーが滑り出したり、転倒したりすることもあります。ベビーカーごとエスカレーターから転倒することもあります。

自転車に同乗時の転倒 重度の頭部外傷リスク

 事例2:5か月、男児。2016年3月、午前10時。母親が男児を背負って自転車を運転し、交差点内の信号のない横断歩道を走行した際、徐行で左折してきた自動車と自転車の左側が接触した。自転車は右側に転倒し、男児がおんぶひもから飛び出し、頭を下にして1メートル前方に落下した。頭蓋骨骨折、急性硬膜下血腫、脳挫傷で12日間入院した。

 おんぶひもは留め金をすべて留め、子どもと母親の体のあいだに隙間はなかった。自転車の子ども用後部座席には男児の姉が座り、ヘルメットを着けてシートベルトをしていた。母と姉は右側に転倒し、軽微な擦過傷を負っただけであった。

 2016年5月には、7か月児を背負って自転車を運転していた保護者が、渋滞中の車列の間から道路を横切ろうとし、対向車線を走ってきた乗用車と接触して転倒。男児は死亡しています。保護者に背負われるか抱っこされるかした状態で自転車が転倒した場合、乳児の頭部にかかる荷重は非常に大きく、重度の頭部外傷に至るリスクがあることがわかっています。 1)

 現在の交通事情では、乳児をおんぶ、あるいは抱っこして自転車に乗車することはたいへん危険です。乳児を連れた保護者に公共交通機関の利用料金を減額するなど、自転車に代わる移動手段を提案した上で、最終的には法的に規制する必要があると思います。

 歩くようになった子どもを自転車に同乗させる場合には、子どもは最後に乗せて、最初に降ろすようにします。子どもを自転車に乗せたままにしておくと、何かの拍子にバランスが崩れ、自転車ごと転倒することがあります。東京消防庁の救急搬送データ(2011年~17年)では、幼児が同乗中の自転車単独事故(1221人)の80%は停車中の事故で、そのうちの92%は転倒事故でした。自転車は2輪なので、倒れやすい乗り物と認識する必要があります。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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