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ヨミドクターメンバーズサロン

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高額な不妊治療を繰り返し1000万円以上使う人も…保険適用に高まる期待

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 「不妊治療の『4つの負担』~『5.5組に1組』をめぐる現実とは?」をテーマにした医療講演「第1回ヨミドクターメンバーズサロン」(ヨミドクター、一般社団法人読売調査研究機構共催)がオンラインで開催された。不妊経験者の自助団体であるNPO法人Fine代表で、ヨミドクターでコラムを連載中の松本亜樹子さんを講師に招き、不妊治療の現状や課題を掘り下げた。視聴者からの質問にもライブで答えた。(2021年3月26日開催。動画は こちら

 講師 松本亜樹子・NPO法人Fine代表
 冒頭あいさつ 梅崎正直ヨミドクター編集長 
 進行・聞き手 藤田勝ヨミドクター副編集長

高額な不妊治療を繰り返し1000万円以上使う人も…保険適用に高まる期待

ライブ配信で不妊治療の実情を語る松本さん(左)

梅崎  ヨミドクターでは、医療のホットなニュースから身近な健康情報まで、幅広くお届けしています。医療の問題は、家族や夫婦の問題、働き方、老後の生き方などライフスタイルと深く関わっており、ヨミドクターでは、そのヒントを教えてくださる専門家のコラムを数多く掲載しております。

 このヨミドクターメンバーズサロンは、そんな専門家の方々を講師にお招きし、今まさに知りたい医療や健康に関わるテーマをより深く、リアルにお伝えすることを目的に新設しました。記念すべき第1回の講師は、人気連載「 いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ 」をご執筆いただいている松本亜樹子さんです。自らも不妊治療体験者である松本さんは、17年前に不妊体験者を支援するNPO法人Fineを設立し、理事長として先頭に立って活動されてきました。

 松本さんには不妊治療を取り巻く現状、当事者の負担、保険適用をめぐる課題など、今まさにホットなトピックをお話しいただきます。

生まれる子の16人に1人が体外受精

藤田  最初に15分程度、松本さんから課題提起をしていただき、続いて私とのトークセッションを1時間程度。その後、みなさんからの質問にお答えするQ&Aの時間を設けています。

松本  まずは団体の紹介をさせてください。NPO法人Fineは自助団体です。患者団体という言い方もされます。2500人くらいの方がメンバーとして加入してくださっていて、カウンセリングや情報提供などの活動に非常に力を入れています。

 最近のトピックは何といっても昨年、菅首相が誕生し、政策の柱として不妊治療への保険適用を挙げたことですね。非常にびっくりした、うれしい出来事でした。

 私たちは、不妊治療には大きく四つの課題がある、負担があるということを言ってきました。まず一つ目が身体的負担、そして二つ目に精神的、心の負担、三つ目が経済的負担、四つ目が時間的負担です。

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 不妊治療で生まれる子どもは年々、すごく多くなっています。右肩上がりで増えて、2018年には16人に1人が体外受精で生まれています。つまりクラスに2人は、卵子も精子も体外に出して、できた受精卵を体に戻すという治療で生まれているわけです。

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 では、この体外受精という治療では、どれくらいの妊娠率があるのでしょうか。実は、生きて生まれてくる率=出産率は12%です。1回で妊娠出産できる方は12%しかいません。そのため、繰り返して治療を受けることになり、治療費も多くかかってきます。

仕事との両立は大変 20%が退職

 費用がかかるので、仕事と治療を両立している方が非常に多いです。全体の97%が仕事をしながら不妊治療を行っているという結果が、私たちのアンケートで出ています。

 両立は大変かと聞くと、96%の方が大変だと答えています。急に仕事を休む必要があるなど、その理由がたくさん挙がっています。では、そうした方たちがどうしたかというと、治療と仕事の両立ができずに働き方を変えたという方が4割もいました。働きながら治療している5人に1人、約20%が不妊治療と仕事を両立できずに退職したという結果も出ています。

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 これは、非常に大きな経済的、社会的な数値です。どれぐらいの損失か、私どもが試算をしました。実に1345億3363万円です。不妊治療が原因の退職で、これぐらいの経済的な損失が出ているということです。

不妊治療施設にガイドラインを

 さて、不妊治療の四つの負担に対して、一体どんな対策が必要でしょうか。

 まず、身体的負担の課題と解決案です。不妊治療による出産率が低いので治療繰り返す。これにより身体的負担だけでなく、精神的負担も生じることがあるわけです。これについては、例えば法整備により、不妊治療施設に対する何らかのガイドラインを設け、妊娠出産がしやすいような仕組み、全体的な底上げをしていくというのも必要ではないかと思います。

 日本は非常に医療が発達しており、不妊治療の技術もとても高いと思います。しかしながら、出産率ということを考えると、12%はまだまだ伸びしろがあると言えないでしょうか。

精神的負担の軽減へ教育の充実を

 続いて、精神的な負担に対する課題と解決案です。不妊や不妊治療に対する無知、偏見、特別視があり、当事者が公言できないという現実が残念ながら、まだこの日本にあると言わざるを得ません。このために、学校教育の中でヘルスリテラシー、プレコンセプションケアをもっと充実させていただく必要があります。新入社員研修など若い世代のキャリア教育にヘルスケアを入れることも効果的だと私たちは思っています。

 経済的な負担に対する解決策としては、保険適用に非常に期待をしています。現在は自費診療のため、高額な治療費を捻出できず、受けられない人もいて、すごく厳しい状況です。若いほど妊娠しやすいのに、若いほど費用が捻出できず、受けられない人がいるというのが残念な事実なんですね。

不妊退職を減らすには既存制度の有効活用を

 そして最後の時間的な負担です。仕事との両立が困難で退職する人が多く、プレマタニティーハラスメントが起こっています。不妊治療をしていることで、退職を勧告されるケースもあるというのが本当に残念な事実です。

 ではどうしたらいいかですが、個人的には特に新たに制度を作らなくても、現行の制度を不妊治療にも使えるようにしていただければ十分です。ただ、それを堂々と使えるような企業風土がなければ結局、当事者が休みをとれなかったり、その制度を使うことができなかったりします。制度を使える風土の醸成が必要です。

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