産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
中高年と若者では、こんなに違う「うつ病」…若者に自責の念は少なく、問題は周囲に
職場の指導が不親切で、すぐに叱る
中野さん:6年先輩の研修担当者の指導が下手なんです。厳しいし、わからない点を教えてくれません。
産業医 :それで。
中野さん:(怒りの口調で)大声を出して一方的に言うだけ。ビビッてしまいますよ。今まで叱られたことがないんです。仕方なく課長に聞きに行きました。そうしたら「忙しい、担当者に聞けよ」って。信じられない。
産業医 :叱られたことがない若い人が増えていますね。
中野さん:(苦痛の表情で)初めてのことなんです。ショックで眠れませんでした。
産業医 :叱責だけですか?
「診断書を書いて下さい」
中野さん:長時間労働もあります。
産業医 :う~ん。
中野さん:慣れない仕事で、退社が午後9時過ぎ。
産業医 :勤怠調査では残業は月に55時間となっていますね。過重労働かな?
中野さん:75時間です。手帳に付けていますから。
産業医 :なるほど。「うつ状態」なら休養加療が必要でしょう。
中野さん:休みたい。わが社は運動部のノリで、根性や気合が幅を利かしている。診断書があれば助かります。
産業医 :書きましょう。
中野さん:先生、うつ病と書いてくださいね。
産業医 :う~ん。
相談に訪れた中野さん、いわゆる「現代型うつ病」と診断しました。気分の落ち込みが続いていて、苦痛やイライラを強く感じています。その点ではうつ病に当たります。従来からの中高年のうつ病の方は、自分を責める気持ちが強いのですが、中野さんは逆に先輩や上司を責めています。そして、自分で「うつ病」と考えています。従来型では、自分では病気と意識していないことが多いのです。ですから、現代型うつ病としました。
違いをはっきりするために、従来型のうつ病に苦しむ46歳の課長、飯田太郎さんとのやり取りを紹介します。
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パソコンで考えるとわかりやすいと思います。個性もありますが、年代や地域によって、OSやベースのソフト(アプリ)が違い、その先の全てが違って見えます。自己を抑圧する状況や因子に、ほぼ同じ状況に対する表現の仕方で、うつ病やうつ症状というものがあるという個人や社会の認知も含めて違います。もっとも、よく調べてみると、年代に限らず、上司が陰湿で他罰的なケースや企業の問題が潜んでいる場合もあるので、医師としても立場は難しい場合はあります。病気を治す、だけではなく、個人と組織の不適合の処理の解決には様々なパターンがあり得ますし、なかなか、きれいごとで片付くとも限りません。
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