産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
中高年と若者では、こんなに違う「うつ病」……若者に自責の念は少なく、問題は周囲に
うつ病が増加しています。厚生労働省の患者調査によると、この20年間に約3倍に増えています。うつ病は以前、「中年の病」と言われてきましたが、近年は若者に増えています。
増加の背景として、工業からサービス産業へという社会の変化、技術革新の持続、世界的な経済競争などがあると思います。また、若者と中高年者のコミュニケーションやライフスタイル・ギャップも関与しています。
私がメンタル系の産業医をしている会社に勤務する23歳の中野次郎さん(仮名)と、46歳の課長、飯田太郎さん(同)の事例を紹介します。
中野さんが相談室を訪れました。

イラスト 赤田咲子
「先生、私はうつ病だと思います」
産業医 :精神科医の夏目です。
中野さん:中野です。入社2年目で総務課に勤務しています。
産業医 :悩み事があるのでしょうか?
中野さん:先生、私はうつ病だと思うんです。
産業医 :診断を自分でつけたの? どこかのクリニックを受診しているのですか?
中野さん:いえ、先生が初めて。ネットで調べてみると、同じような症状でしたから。
産業医 :診断は医師が行うものですよ。
ネットにあった抑うつ度のチェックリストで確認
中野さん:ネットで見つけた「抑うつ度のチェックリスト」をやってみると高得点でした。
産業医 :そうか。
中野さん:本も買って読みましたが、同じです。
産業医 :ネットは玉石混交でしょうが、しっかりしているものでは早期発見の手掛かりになることもあります。おつらい点を話してください。
中野さん:3週間以上前から気分が落ち込み、イライラして仕事に集中できない。
産業医 :イライラするのですね。
中野さん:そうです。
産業医 :絶えず?
中野さん:職場にいる時だけです
産業医 :何かきっかけがありましたか?
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パソコンで考えるとわかりやすいと思います。個性もありますが、年代や地域によって、OSやベースのソフト(アプリ)が違い、その先の全てが違って見えます。自己を抑圧する状況や因子に、ほぼ同じ状況に対する表現の仕方で、うつ病やうつ症状というものがあるという個人や社会の認知も含めて違います。もっとも、よく調べてみると、年代に限らず、上司が陰湿で他罰的なケースや企業の問題が潜んでいる場合もあるので、医師としても立場は難しい場合はあります。病気を治す、だけではなく、個人と組織の不適合の処理の解決には様々なパターンがあり得ますし、なかなか、きれいごとで片付くとも限りません。
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