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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

がん患者も新型コロナワクチンを打った方がよいのでしょうか

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プラス面がマイナス面を上回る

 副反応のことを怖く感じる方は多いと思いますが、「副反応が嫌だから打たない」と考えるのではなく、副反応というマイナスの程度と、ワクチン接種によって得られるプラスの程度をてんびんにかけて考えることが重要です。これまでに、コロナによって日本で約1万人、世界で約300万人の命が失われています。ワクチン接種によって命にかかわる重篤な副反応が100万人に1人程度起きるとしても、「コロナの発症を抑えることで、より多くの命を救える」というプラス面の方が、明らかに大きいように思います。

 がん患者に特化したワクチンの効果や副反応についての報告はまだ少ないのですが、がん患者では、コロナ発症後に重症化する可能性が高いことが知られていますので、コロナ発症を抑える意義はがんを患っていない方よりも大きいと考えられます。がんを患っていること、あるいは、がんの治療を受けていることで、副反応の影響が強く出る可能性はありますが、そうであっても、プラス面がマイナス面を上回るはずです。より詳細な情報を知りたい方は、 日本 (がん) 治療学会,日本癌学会,日本臨床腫瘍学会の3学会が作成したQ&A をご覧ください。

 コロナに関する新しい情報は日々更新されていますので、今後も新しい情報に注意しつつ、冷静にバランスよく判断するようにしましょう。わからないことがあれば、かかりつけの医師に尋ねてみましょう。抗がん剤などの治療中の方は、「どのタイミングで打つのがいいか」についても、あらかじめ担当医と相談しておくとよいでしょう。「抗がん剤投与日の前後はできれば避けつつ、打てるなら早めに打つ」というのが、現時点での見解です。

納得できる選択を

 打つか打たないかは、最終的には個人の判断に委ねられます。よく考えた上で、「打たない」という判断をする方もおられるでしょう。接種はけっして強制されるものではありませんし、そういう判断をした方を差別するようなことがあってはいけません。皆さんに、ワクチン接種のプラス面とマイナス面を自分の問題として考えていただき、納得できる選択をしてほしい、というのが私の願いです。そして、その結果として、がん患者さんを含むできるだけ多くの方にワクチン接種を受けていただければ、と思っています。感染の第4波がどうなるかが心配ですが、これを乗り切ったあと、第5波以降はワクチンで抑え込めることを期待しています。(高野利実 がん研有明病院乳腺内科部長)

参考文献:
  1. Polack FP, et al. N Engl J Med 2020;383:2603-15.
  2. Dagan N, et al. N Engl J Med 2021;384:1412-23.
  3. 順天堂大学 コロナワクチン研究事務局:新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大付属病院で研修後、2000年より東京共済病院呼吸器科医員、02年より国立がんセンター中央病院内科レジデントとして経験を積んだ。05年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。08年、帝京大学医学部付属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、「日本一の腫瘍内科」を目標に掲げた。10年間の虎の門時代は、様々ながんの薬物療法と緩和ケアを行い、幅広く臨床研究に取り組むとともに、多くの若手腫瘍内科医を育成した。20年には、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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