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大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」

医療・健康・介護のコラム

高齢者へのワクチン接種スタート……安全性、副反応など疑問に答えます

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アナフィラキシーが特に多いワクチンではない

Q.筋肉注射って痛くない?

 テレビで腕の奥深くに針が刺されるシーンを見て痛そうに感じた方も多いと思います。筋肉注射は皮下注射に比べて吸収が早いのが特徴です。日本以外の国では、ワクチンは筋肉注射で行うのが一般的です。痛みの神経は皮膚の浅いところに多く存在するので、筋肉注射の方がむしろ痛みは少ないと言われています。

Q.アナフィラキシーが怖いです

 アナフィラキシーは、接種後全身に表れるアレルギー症状です。最も多い症状はじんましんなどの皮膚症状、くしゃみやせきなどの呼吸器症状、目のかゆみやくちびるの腫れなどの粘膜症状です。米国の治験でのアナフィラキシーの発生頻度は、ファイザー社のワクチンで、100万接種当たり11.1件との報告があります。他のワクチンに比べれば若干高い頻度ですが、皆さんも服用したことが多い抗生物質では、100万投与当たり300~4500件と言われていますので、このワクチンは特別アナフィラキシーが多いとは言えないと思います。アナフィラキシーを発症しても、適切な処置により治療が可能ですので、接種後にしっかり待機して観察することが重要です。

基礎疾患がある人こそ接種してください

Q.基礎疾患があるのですが、接種して大丈夫なのでしょうか?

 基礎疾患がある人こそワクチンを打ってもらいたいです。ワクチンを打つか打たないかをてんびんにかけるのではなく、「ワクチンを打った時のリスク」と「ワクチンを打たないで新型コロナにかかってしまうリスク」を比べるべきです。糖尿病や肥満など、新型コロナ感染症における重症化リスクは明らかになってきています。今のところ重症化リスクの高い人が、ワクチンの有害事象が起きやすいというデータはなく、服用している薬剤との相互作用も報告されていません。

Q.なぜこんなに接種できるまでに時間がかかるの?

 ファイザー社のワクチンは、保管方法が難点です。-90~-60度の超低温状態で輸入され、当初はその状態での保管が原則でしたが、現在では-25~-15度の一般的な医療用冷凍庫でも最長2週間の保管が可能となりました。しかし、解凍して希釈後は6時間以内に使用しなければいけないこと、また希釈後は大変デリケートで振動などにも気をつけなければいけないこともあり、インフルエンザワクチンのような管理ができないことが問題です。集合接種場であれば、一定量のワクチンをまとめて冷凍配送が可能ですが、一般の診療所などに少人数分配送することはまだ課題が多いため、接種開始まで時間がかかっているようです。

日頃の感染防止とワクチンでウイルスの拡大を止めましょう

 ここまで読んでいただいて、接種への不安が少し和らいだ方もいらっしゃると思います。しかし、このワクチンの接種はあくまで任意です。そして、ワクチンのメリット・デメリットが全て明らかになったわけでもありません。接種しないという意思も尊重されるべきです。接種しない人への差別や、接種しない人が感染した場合に、接種しないことを理由として批判するのは間違っています。一人一人の感染防止への心がけとワクチンによって、このウイルスを制止し、新しい世界へと進むことを心から願っています。(大橋博樹 医師)

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大橋博樹(おおはし・ひろき)

多摩ファミリークリニック院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。
1974年東京都中野区生まれ。獨協医大卒、武蔵野赤十字病院で臨床研修後、聖マリアンナ医大病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務の後、2006年、川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年、多摩ファミリークリニック開業。

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1件 のコメント

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