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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

不眠や日中の眠気……女性に発症しやすい睡眠障害とは

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 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。

 睡眠問題は性別に関わりなく、子どもから高齢者までどの年代層でもみられますが、中には女性に特有な睡眠問題があります。

睡眠障害には男女で差がある

不眠や日中の眠気……、女性に発症しやすい睡眠障害には

 睡眠障害に限ったことではありませんが、多くの病気には、かかりやすさに男女差があります。例えば、不眠症は女性に多く、睡眠時無呼吸症候群は逆に男性に多いことが分かっています。発症率に性差のある睡眠障害はほかにもたくさんあります。

 男女間で発症に差が生じるのは、自律神経やホルモン機能など身体面のほか、育児、家事、就業、ストレスの強さなど、さまざまな生活要因による影響です。そして、発症の男女差における最大要因とも言えるのが、生理(月経)、妊娠・出産、更年期などに関連した不眠や眠気で、当然ながらこれらは女性だけに認められる特殊な睡眠障害です。

 月経の1週間ほど前から腹痛や腰痛、むくみ、イライラなどとともに、不眠や強い眠気に悩まされる女性がいます。特に月経関連症状が強い約1割の女性は、毎月、4分の1の期間にわたって体調が悪くなるのだから、生活に及ぼす影響は深刻です。

 妊娠中にも眠気は強くなります。妊娠中に大量に分泌されるプロゲステロンやエストロゲンなどの女性ホルモン、母乳分泌を促進するプロラクチンなどが原因だとされています。さらに、妊娠中には体重増加や咽頭のむくみによってイビキが大きくなることで、睡眠時無呼吸症候群が生じ、眠気の原因になることもあります。加えて、妊娠後期になると、赤ちゃんが大きくなり、腹部を圧迫するので 仰臥位(ぎょうがい) で寝続けられません。夜間の頻尿、睡眠中のこむら返り、レストレスレッグス症候群(脚のムズムズ感による不眠)なども起きやすくなるために睡眠の質が低下し、眠気が強くなるのです。

 産前や産後に情緒的に不安定になり、不眠が悪化することもあります。これはマタニティーブルーと呼ばれますが、不眠が強い女性はさらに症状が強まり産後うつに陥りやすいことも分かっています。

うつ病が隠れていることも

 更年期障害でも不眠がしばしば出現します。ほてりやのぼせ、汗かきなどのほか、更年期障害を訴える女性の半数以上が、寝つきの悪さ(入眠困難)や夜中の目覚め(中途覚醒)などの不眠症状に悩まされます。妊娠中と同じように、更年期障害にもうつ病が合併することがあります。特に、不眠や眠気が強い、長引く、治りにくい時は要注意です。睡眠薬などを使った不眠治療だけでは治らず、うつ病の治療が必要になるからです。睡眠問題は自覚しやすいのですが、うつ状態にはご自分も、周囲の人々も気付きにくいことが多いので、不調が続くときは「もしかしたら……」と疑ってみることも必要でしょう。

 このように、女性は成長、妊娠・出産、加齢の各ライフステージで特有の睡眠障害に悩まされることが多いのです。さらに言えば、睡眠不足大国・日本の中でも、女性、特に職業に就いている女性の睡眠時間が、男性に比べて圧倒的に短いことも分かっています。

 なぜなのか――。それは、朝食も、ゴミ出しも、夕食の後片付けも奥さんに任せっきりの男性は、胸に手を当てればハッと気付くはずです。女性特有の睡眠問題に、男性はぜひ理解を深めていただきたいと思います。(三島和夫 精神科医)

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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