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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

医療・健康・介護のコラム

訪問介護のヘルパーさんは、「人生のヘルパーさん」なのだから

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「医療的ケア」の学びの場所「介護塾」

訪問介護のヘルパーさんは、「人生のヘルパーさん」なのだから

写真〈1〉

訪問介護のヘルパーさんは、「人生のヘルパーさん」なのだから

写真〈2〉

 有沢さんは、その後、介護士などに対して医療的ケアを指導する、「くりはら介護塾」の門をたたきました。宮城県栗原市や仙台市で運営されている同塾では、介護士らを対象に、これまで約1300件もの「たん吸引・経管栄養注入」の研修を行っており、修了したみなさんは県内の各地で、重度障害のある方の生活を支えています。

 「くりはら介護塾」を運営する看護師の遠藤美紀さんによると、このたん吸引・経管栄養の資格は、不特定多数の方に医療的ケアができる1号・2号と、特定の利用者にのみ医療的ケアができる3号に分類されているそうです。1号・2号の研修は、50時間もの講義と20回以上の実地研修が必要で、取得するにはかなりハードルの高い資格です。有沢さんは、ひとまず大西さんだけにたんの吸引と経管栄養の注入ができる「第3号」の研修を受けました。医療的ケアに関する医学的な知識や制度についての講義ののち、理解度を確認する筆記試験を行い、合格したらシミュレーター(人体模型)を使った吸引の実習を行います(写真〈1〉〈2〉)

 その後、実際の患者さんにたんの吸引や経管栄養の注入を行う実地研修で、正しく吸引手技が行えていることを確認したのちに、第3号の資格を取得することができます。

在宅医や訪問看護師は24時間患者のそばにはいられない

 有沢さんは、研修を受け資格を取得したものの、「練習が足りなくて、上手にたんを取り切れない。私の技術がまだ不十分で、大西さんに申し訳ないです」と話します。実は、大西さんの妻の幸恵さんは元看護師で、「医療職の人でも、慣れていない患者の吸引は難しいから焦らなくて大丈夫よ」と励ましてくれます。しかし、彼女の踏み出した一歩は、大西さんにとって大きな安心につながりました。医療的ケアができるヘルパーさんは、単なる日常生活のヘルパーさんではなく、患者さんの在宅生活を支える「生きるために必要な人生のヘルパーさん」です。

 これは栄養管理にも通じることです。私は大西さんの嚥下食を毎日作ることはできません。訪問できるのは月2回です。医師や看護師も、一人の患者さんに関わる時間は多くても週に数時間です。重度の障害のある方にも訪問できるだけの知識と技術を持った介護職員がいないと、在宅医療を推し進めることは不可能です。

 介護士による虐待など、残念なニュースばかりが取り沙汰される昨今ですが、有沢さんのように、利用者さんの生活がより豊かになるよう、自分の技術を磨き、日々奮闘している介護士はたくさんいます。体力的にも精神的にも負担の大きい介護職に、人材が集まらないことが大きな問題になっていますが、医療的ケアが必要な方が、住み慣れた場所で暮らせるように、国は介護職の待遇を改善し、働きやすい環境を整えていくべきです。さらに、「介護」は医師や看護師と同じように専門性の高い仕事であるということが、もっと広く知られていく必要があると思います。(在宅訪問管理栄養士 塩野崎淳子)

参考文献:
協力:

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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