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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

走って登校中に転倒した7歳男児 肩がけの水筒ですい臓損傷、半分切除…腹部への外力は臓器に到達する

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 前回は、幼児がとがったものを持っていて転倒した場合の危険についてお話ししました。今回は、もう少し年齢層が上がった子どもが転倒した場合の危険についてお話ししましょう。幼児期と比べ、走ったりするときも運動量が大きくなりますので、ぶつかった衝撃も大きくなります。肺や心臓は、胸郭を形成している骨で守られていますが、腹部は薄い皮下脂肪や筋肉に覆われているだけなので、強い外力は内臓( 脾臓(ひぞう) や腎臓や肝臓など)に直接到達してしまいます。また、転倒したときに腕で体を支えられないと骨折します。

走って登校中に転倒した7歳男児 肩がけの水筒ですい臓損傷、半分切除…腹部への外力は臓器に到達する

イラスト:高橋まや

側溝での転倒 腹腔内に大量の出血

  事例1 :6歳、男児。2016年12月13日午後4時ころ。保育所の園庭で追いかけっこをし、園庭と保育室の間にあるデッキの通路上を走っていたところ、デッキに置いてあったサッカーゴールの網に足をとられ転倒した。保育士が駆け寄り全身状態を確認したところ、意識は清明であった。

 以後、室内で安静にし、午後6時過ぎに祖母に引き渡されて帰宅した。午後7時過ぎに容体が悪くなり、自宅から救急搬送されたが、翌14日午前5時過ぎ、搬送先の病院で死亡が確認された。

 この事例では検証委員会が設置され、検証報告書が公開されていますが、医療機関や警察からの情報が得られなかったため、詳しい状況は不明のままです。腹部外傷による出血死の可能性が高いと指摘されているだけでは、どうしたら予防できるのかわかりません。検証のやり方を検討する必要がある事例です。

  事例2 :7歳5か月、男児。2015年6月5日、午前8時ころ。ランドセルを背負い、水筒を左斜めに肩にかけ、雨天のため傘をさしながら走っていた。水筒は腰の高さに位置していた。小学校内に入ったところでつまずいた。走っていたため、かなり勢いがついており、回転するように転んだ。その時、首から提げていた水筒が、硬い地面(土)とおなかの間に挟まり、腹部を強打した。水筒は蓋側が下(地面側)で、底の部分で左側腹部を打った。受傷直後からぐったりして 嘔吐(おうと) が続き、近くの医師を受診した後、病院に入院した。血液検査や腹部CT(コンピューター断層撮影)検査で外傷性の (すい) 損傷と診断され、3回の手術が行われた。膵臓は半分切除され、脾臓の摘出も行われた。1か月半後に退院した。

 子どもの腹部の前方に固いものが位置している状態で転倒すると危険です。予防法としては、水筒は肩や首にかけて持ち運ぶのではなく、ランドセルに収納するとよいと思います。

  事例3 :12歳、男児。2016年11月23日、午後4時ころ。野球場で練習中、ファウルボールを捕球しようとしたところ、側溝に足を取られて転倒した。その時、側溝の反対側の盛り土で左半身を打った。側溝や盛り土の周りにはフェンスなどの障害物はなかった。受傷直後から左側腹部の痛みで動けなくなり、救急車にて医療機関に搬送され、入院した。脾臓や左腎臓の損傷が認められ、 腹腔(ふくこう) 内に多量の血液の貯留が認められた。12日間入院した。

 体幹部がちょうど側溝の盛り土の高さだったため、臓器の損傷につながりました。側溝での重症例では、自転車に乗っていて転落するケースが多く、脳神経系の傷害につながります。側溝にフェンスを設置すれば予防できる可能性があります。

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yamanaka-tatsuhiro_prof

山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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