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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

家族性大腸腺腫症 低用量アスピリンで再発予防 大腸全摘に代わるがん予防の選択肢に

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京都府立医科大学など研究グループ

家族性大腸腺腫症 低用量アスピリンで再発予防 大腸全摘に代わるがん予防の選択肢に

 大腸にポリープ(腺腫)が数多くできる遺伝性の病気「家族性大腸腺腫症(FAP)」の患者で、低用量のアスピリンを服用することでポリープの発症を抑制できるとの研究結果を、京都府立医科大学などの研究グループが発表した。

 FAPは、患者が成人した頃には予防的な大腸全摘手術が行われることが多く、大腸が温存されている患者を対象にした大規模研究は世界的にもなかったという。大腸の全摘手術は体への負担が大きいことから、大腸を温存したまま、薬でがんの発症を抑えることが可能な予防治療の選択肢として期待されそうだ。

 医学専門誌「THE LANCET Gastroenterology & Hepatology」に4月2日、掲載された。

ポリープの増大を3分の1に抑制 がんの発症予防に

 日本におけるFAPの患者数は約7300人。遺伝性の病気で、若い頃から高い確率で大腸がんを発症することが知られている。

 研究グループは2014年に、FAPではない大腸ポリープを摘出した患者に対し、低用量アスピリンを服用することで再発を抑制することを報告している。今回の研究は、FAP患者のうち大腸を温存している患者を対象に、内視鏡で5ミリ以上の大きなポリープを取り除いた後、低用量アスピリンを服用してもらい有効性などを調べた。

 全国11の医療機関から104人の患者が参加。低用量アスピリン(1日100ミリ・グラム)を8か月間服用するグループと偽薬のグループに分けて、期間中に5ミリ以上のポリープが発生した人の割合を二重盲検ランダム化比較試験で調べた。その結果、低用量アスピリンを服用したグループでは、新たに5ミリ以上のポリープが発生した割合は3分の1程度に抑えられた(補正オッズ比0・37、95%信頼区間0・16~0・86)。

 また、大腸がんが発生しやすい左側大腸において、より強くポリープの増大を抑える効果も示された。

 なお、同時に試験を進めた潰瘍性大腸炎治療薬「メサラジン」については、抑制傾向を示すにとどまった(補正オッズ比0・87、95%信頼区間0・38~2・00)。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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