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パーキンソン病、早期治療で進行抑える…診断基準見直し

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 パーキンソン病は、脳の神経細胞に異常が生じ、歩行障害や便秘、睡眠障害など様々な症状が出る難病です。薬物療法で進行を遅らせることができ、2018年に早期発見・治療がしやすい形に診断基準が見直されました。(佐々木栄)

パーキンソン病最新診断基準…早期治療で生活の質改善

  発症前の兆候

 この病気は、50歳頃から増え始め、患者は16万人に上ります。高齢化に伴い、今後さらに増えることが予想されています。

 脳の神経細胞に異常なたんぱく質「 αアルファ シヌクレイン」が蓄積することが病気の原因と考えられています。症状が表れる10年以上前から兆候は出始めています。

 まず、消化器や嗅覚に関わる神経などに蓄積し、便秘や嗅覚の低下、就寝中に手足の激しい動きや寝言が出る睡眠障害、うつなどが起こります。中脳の「黒質」にたまると、神経細胞が壊され、運動を調節する神経伝達物質「ドーパミン」が不足し、手足のふるえなどの運動症状が出ます。

 大阪大教授(神経内科学)の望月秀樹さんは「運動症状が出る前の症状を知っておくことが早期発見・治療につながります」と説明します。

  2つ以上の症状で

 早期の患者を確実に診断することを重視し、日本神経学会は18年、診療ガイドラインを改定しました。〈1〉動作が鈍くなる〈2〉静止時に手足がふるえる〈3〉筋肉がこわばる――の三つの運動症状のうち、〈1〉と、〈2〉か〈3〉が当てはまることをパーキンソン病と定義しました。

 〈1〉には、声が小さくなる、歩くのが遅くなる、足が出にくい「すくみ足」などがあります。〈2〉は、じっとしている時に片側の手が1秒間に5回程度ふるえることなどが特徴的です。〈3〉では、手足の動きがぎこちない、表情がない、肩や腰が痛むなどが挙げられます。

 旧基準には、バランスを崩して転びやすくなる「姿勢保持障害」が含まれていましたが、進行してから表れるため除外されました。

 根治は困難ですが、なるべく早くドーパミンを補う薬物療法を始めることで、症状を抑えられ、生活の質を改善できます。

 運動症状への即効性が高いのは「レボドパ製剤」です。服薬が長期化すると体が勝手に動く運動合併症が出たり、効き目が切れて体が動かなくなる時間帯ができたりします。

 神経伝達の活動を促す治療薬「ドーパミンアゴニスト」もあります。レボドパ製剤と比べて効き目は緩やかですが、運動合併症は起こりにくく、ゆっくり溶ける飲み薬や効果が長続きする貼り薬も出ています。脳内のドーパミン分解を抑える「 MAO―Bマオビー 阻害薬」なども使われています。

 薬で十分改善しなくなると、「脳深部刺激療法」を検討します。電極や刺激装置を脳などに植え込み、脳の特定の部位を電気で刺激します。狙った脳の部分を超音波で加熱して焼く「集束超音波治療」を実施することもあります。髪をそり、位置を固定する器具を頭にピンでとめる処置が必要ですが、頭を切開せずにすみます。

 望月さんは「パーキンソン病と診断されても病気とうまく付き合い、長生きできます。進行に伴い症状は変わるため、主治医と相談し、最適な治療法を選びましょう」と話しています。

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