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大人の健康を考える「大人び」

医療・健康・介護のコラム

脚の痛み(最終回)在宅高齢者の20~25%が年1回は転倒 歩ける体、維持を

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  このシリーズでは、関節外科が専門で関西労災病院(兵庫県尼崎市)副院長の津田隆之さんに聞きました。(聞き手・長尾尚実)

脚の痛み(16)歩く習慣 転倒の予防に

 加齢や活動量の低下で心身が衰えた状態を「フレイル」と言います。家に閉じこもっていると、筋力が弱って運動の機会が乏しくなり、さらに脚が衰えるといった負の連鎖に陥り、転倒の危険はさらに高まります。転倒による骨折を予防するには、フレイルの状態から脱しないといけません。

 日本では、在宅で生活する高齢者の20~25%が年間1回以上、転倒を経験しており、施設に入所している高齢者は在宅に比べ、転倒する割合が高いとされます。

 転倒を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。お勧めは歩く習慣をつけることです。高齢者の転倒が多い理由には、筋肉量の減少のほか、関節の変形、体のバランスを保つ力の衰え、とっさの時の反応の遅れ、白内障による視力の低下などが関係します。普段から問題なく歩ける体を維持すれば、転倒のリスクは下がります。

 骨粗しょう症対策の面でも運動は有効です。骨密度を保つには一定の負荷や刺激が必要です。無重力空間で過ごす宇宙飛行士は地球に戻ると骨密度と筋肉量がかなり落ちています。運動が骨密度の維持でも必須のものと分かります。

 服用中の薬にも注意が必要です。降圧薬は効き過ぎると立ちくらみやふらつきの原因になります。睡眠薬も夜中にトイレに行く際などに頭がぼーっとして転倒しかねません。副作用で筋力が低下してしまう睡眠薬もあります。

 医師として、寝たきりにつながる股関節の骨折を何とか防ぎたいといつも考えてきました。新型コロナウイルスの影響で外出をためらう状況が続いていますが、元気に楽しく暮らしていくためにも積極的に運動してください。

津田隆之さん

【略歴】
 津田 隆之(つだ・たかゆき)
 三重県多気町出身。1982年、大阪大医学部卒、90年、同大学院修了。星ヶ丘厚生年金病院(現・JCHO星ヶ丘医療センター)整形外科部長、箕面市立病院医務局次長などを経て、2017年4月から現職。専門は関節外科、骨粗しょう症の疫学。市民向け講演会などで、脚の痛みを起こす病気や治療法、転倒予防について解説している。

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