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医療・健康・介護のコラム
剥離骨折のメカニズム。筋肉の動きに引っ張られて発生
少しずつ暖かくなってきました。まだ新型コロナウイルス感染症の収束が見えないため、スポーツ活動が制限され、思うように運動ができていない人も多いかと思います。思う存分、体を動かしたい季節ですが、まだ油断できない日々が続きそうですね。今回は、成長期に特徴的なけがの話です。
Jさんは、小学生の時からサッカーをしています。これまで、大きなけがや故障をしたことはありません。中学生になり、練習でダッシュをした際、右の股関節付近に痛みが出現しました。歩くだけでも痛みがあり、医療機関を受診すると、骨が剥離していると言われました。
筋肉は骨と骨を連結して関節を動かす
関節を動かす時、筋肉が働くことはよく知られています。では、その際、伸び縮みする筋肉をどうコントロールしているのでしょうか。知っている人には簡単かもしれませんが、筋肉は縮む(収縮する)ことで、関節運動を起こしているのです。たとえば、肘を曲げる時は力こぶである上腕二頭筋や上腕筋が縮むことで、骨が動いて肘関節が曲がります。この時、上腕の裏側にある上腕三頭筋は 弛緩 して、受動的に引き伸ばされます。一方、肘を伸ばす時は上腕三頭筋が収縮して、上腕二頭筋や上腕筋は弛緩します。

筋肉が収縮する時、その周辺部位の骨には大きな力が加わります。この力が繰り返し加わったり、急激に大きな力がかかったりすることで、筋肉の付着部の骨が剥離することがあります。特に中学生から高校生くらいにかけて筋力は大きくなりますが、筋肉が付着する部位にはまだ軟骨成分が残っている場所があります。外力を受けたり、転倒したりしなくても、自分の意思で関節を動かそうと筋肉を収縮させることによって、剥離骨折を起こすことがあります。
剥離骨折の頻度が高い部位として、 縫工筋 が付着する 上前腸骨棘 が挙げられます。あまり聞きなれない筋肉かもしれませんが、股関節を曲げる働きをするため、走る動作やキック動作時に縫工筋が収縮した際、その付着部で剥離が生じることがあります。

剥離骨折が生じた場合、痛みの程度は様々です。ひどい場合は歩行が困難になることもあります。一般的にはスポーツ活動を休止して、症状の改善とともにリハビリテーションをしながら復帰を目指します。また、骨が長くなることで伸びていく身長ですが、急激に成長している時期には、それに筋肉の伸びが追い付いていないことが考えられます。この場合、相対的に筋肉の張りが強くなるため、筋肉の付着する骨に負担がかかりやすくなります。元々体が硬い場合も同様に負担がかかりやすいので、予防のためにも普段からの十分なストレッチが重要です。
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