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スポーツ脳しんとう すぐに休ませて…繰り返すと認知機能低下の恐れ

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 脳しんとうがスポーツ界で注目され、対策を進める動きが広がっています。脳が揺さぶられることによるけがで、頭を直接、打たなくても発症することがあります。繰り返すと、頭痛やめまいが続いたり、認知機能が低下したりする恐れもあります。(大塚貴司)

スポーツ脳しんとう…選手 すぐに休ませて

  深刻な障害も

 脳しんとうは、脳の深い部分にひずみが起きて、脳細胞が一時的に停電を起こした状態です。ほとんどがMRI(磁気共鳴画像)検査などでは確認できません。頭部が揺さぶられると、脳がダメージを受けます。勢いよく尻もちをついて起こることもあります。

 意識を失う症状が代表的ですが、記憶が飛んだり、平衡感覚が悪くなってふらついたりするほか、「怒りっぽくなる」「心配になる」など精神面に影響することもあります。ひどい場合は、静脈が切れ、命にかかわる急性硬膜下血腫を合併する恐れがあります。激しい頭痛や 嘔吐おうと が続くならば、救急車を呼びましょう。受傷から数時間後に重症化することもあり、24時間は一人にしないことが大切です。

 脳しんとうを起こしやすいのは、他者とぶつかる機会のある競技です。スノーボードは、不意に転倒するのが危険です。試合で頭部に衝撃があった時には症状を確認し、「今日はどこの競技場に来ていますか」などと質問して記憶を確認します。平衡感覚もテストし、脳しんとう、または疑いがあると判断されれば、当日のプレーは禁止です。

 初めて脳しんとうを起こしたら、休養を取るなど慎重に対応すれば症状の悪化が少ないとされていますが、対応を誤ると、繰り返しやすくなる傾向があります。度重なれば、頭痛やめまいなどが1か月以上続く脳しんとう後症候群、さらには慢性外傷性脳症へと進行することが心配されます。認知機能が低下したり、うつ状態になったりすると言われています。

 昨年、英国の元ラグビー選手たちが、認知症を患うなど脳に障害を負ったのは競技団体などの過失が原因として、提訴する意向を示しました。聖隷三方原病院(浜松市)の脳神経外科部長で、日本ラグビー協会安全対策委員を務める佐藤晴彦さんは「認知症になるのは様々な要因があり、脳しんとうが関与するのか医学的に解明するのは難しいと思います」としながらも、「頭への衝撃が蓄積すれば、悪影響はあるかもしれません」と説明します。

  競技団体が指針

 各競技団体も対策に力を入れています。早くから取り組んでいるのが、ラグビーです。2011年には国際統括団体が指針を発表し、脳しんとう後の復帰などについて細かく定めました。佐藤さんによると、各国で小学校低学年代のタックルが禁止されています。

 英国ではイングランドサッカー協会が昨年、子どもの脳に悪影響を及ぼす恐れがあるとして、11歳以下のヘディング練習を禁ずる指針を発表しました。米国では16年度から同様の指針が運用されています。

 日本サッカー協会医学委員で、東京慈恵会医科大客員教授の谷諭さんは「脳しんとうは繰り返すと怖いので注意が必要です。ヘディングによる悪影響を示す科学的根拠はありませんが、日本でも対応を検討しています」と話しています。

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