産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
コロナ禍で仕事上の対人ストレスは減少、でも、別のストレスが増加
新型コロナ禍が1年以上も続き、精神科医としては、「コロナうつ」や「コロナ疲れ」、「コロナ不安」という言葉が気になります。うつ病や不安障害など、心の病は増加しているのでしょうか。私は関与する大企業5社、2人の産業医、3人の精神科医・産業医に意見を聞いてみました。結果は「増加していない。いつもと同じくらい」、「少し減っているかなぁ」というコメントです。統計的なものではなく、私の周辺の感触にすぎませんが、意見交換をしていると、「ハタラク心」に影響する二つの変化に思い至りました。
テレワークなどによるStay Homeや営業方法の変革で、対人ストレスや過重労働が減ったというプラスの面。一方、新しい労働環境での新しいストレスが出てきているということです。
以下、男女の社員を交えた対話から現状などの説明をいたします。

イラスト 赤田咲子
ノルマや過重労働が減った
渡辺社員(男性):人事課の渡辺です。ひとつ尋ねたいことがあって来ました。
宇島社員(女性):私もお聞きしたい点がありまして。
私 :産業医の夏目です。どんな点ですか?
渡辺社員:新型コロナ禍で「コロナうつ」や「コロナ疲れ」が周りで言われている割に、診断書を出して休む社員が減っているように思います。うちだけなのかどうか?
宇島社員:女性からは「テレワークで夫や子どもが家にいる時間が増え、自宅は過密状態」、「家事など私の負担はいっぱい、いっぱい」などの声が聞こえてきます。
私 :なるほど、実感は男女で違いがありそうですね。
渡辺社員:テレワークが増え、苦手な人と顔を合わせる機会が減少して対人ストレスが減っている面があるのかもしれません。それ以外にも、残業などの過重労働がなくなっていますね。
宇島社員:それは大きいですね。営業の人たちはノルマ達成を強く言われなくなり、ホッとしているようです。
私 :なるほど、なるほど。
渡辺社員:テレワークへの切り替えなどで、当初はバタバタしましたが、他者に気を使うことが減って、そこは楽になっているかもしれません。
宇島社員:女性の中では、ファッションの楽しみが減ったという意見と、かまわなくていいから楽という人もいて、それぞれですね。
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