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リングドクター・富家孝の「死を想え」

医療・健康・介護のコラム

無痛分娩で亡くなった31歳の母親の無念……産婦人科選びは慎重にも慎重に

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無痛分娩で亡くなった31歳の母親の無念……産婦人科選びは慎重にも慎重に

 先月16日、大阪地検は、医療事故を起こした産婦人科医O氏(63)に対し、嫌疑不十分で2度目の不起訴としたことを発表しました。医療事故が起こったのは2017年。当時、O医師が経営する大阪府和泉市の「Oレディスクリニック」で、第2子を出産した長村千恵さん(享年31)が、無痛分娩中に呼吸困難に陥り、10日後に死亡したのです。

 この死に不審を抱いたご遺族の訴えで大阪地検が捜査をしましたが、結果は不起訴。しかし、検察審査会が「再考を求める」と不起訴不当を議決したため、メディアで大きく取り上げられました。それで、私も注目してきたのですが、再び不起訴となって、「やはり……」と思うほかありませんでした。

医療事故の刑事裁判では医師は不起訴になるもの

 なぜ、そう思ったかですが、私には長年にわたり医療事故を取材・追及してきた経験があり、また、自らも息子の医療事故で母校相手に裁判で闘ったことがあるからです。私の場合は、刑事、民事とも敗訴し、担当医師の責任は不問に付されました。

 今回もまた同じです。現在の医療事故の刑事裁判では、医師はほぼ間違いなく不起訴になります。いくら証拠をそろえても、裁判官がよほど医療に詳しくて事件性を認めない限り、裁判所は医者に有罪判決を出しません。

 この流れは、2004年の「大野病院事件」でほぼ確定し、以来、今日まで、まったく変わっていません。大野病院事件とは、福島県立大野病院で帝王切開の手術を受けた妊婦が死亡し、執刀医が業務上過失致死罪などの容疑で逮捕、起訴された事件です。この時、検察は裁判で敗訴し、医療界や社会から激しく非難されました。

 これがトラウマとなって、以来、明らかな医療事故でも起訴をしなくなったのです。それに、ただでさえメンツにこだわる検察です。いったん不起訴とした事件を自ら覆すわけがありません。

 「娘はなぜ亡くなったのか、どこに医療の問題があったのか。医療制度のどこを改善すれば事故を防げたのか。不幸な事故を再び起こさないためにも公開の裁判でそうした問題を議論し、医療制度の改革につなげる必要があったと思います」と、千恵さんの父親の安東雄志さん(71)は、不起訴決定後、こう無念の涙を流したと、取材にあたった医療ジャーナリストの長谷川学氏から聞きました。

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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

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