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新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

生まれつき脊椎に障害がある二分脊椎症 出産後に間もなく手術 歩行など成長に伴い様々な症状

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胎児超音波検査で診断 出産後すぐ髄膜瘤を手術 脳脊髄液のシャント手術も

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オンラインで対談する宇佐美珠江さん

 「最近、体調はいかがですか」。私は、アイスコーヒーを提供しつつ、親子に声をかけた。

 二分脊椎症は、生まれつきの病気だ。母親の胎内にいるときには発症している。

 知美ちゃんは妊娠25週に胎児超音波(エコー)検査で二分脊椎症と診断された。出産後すぐに赤ちゃんに手術が必要になるため、予定日よりも少し早く37週で計画的に帝王切開で出産し、すぐに背中と頭に手術が行われた。

 背中にできた、髄膜瘤(りゅう)といわれるコブを取り除き、きれいに塞ぐ。私も、背中の手術を受けた。50歳を過ぎた今でも大きく手術痕が残っている。

 併せて、脳脊髄液の循環がうまくいかず、悪化すると頭蓋内に水がたまってしまうため、頭から首にかけてシャントというチューブを埋め込んで、脳の中の水を逃がす手術をすることが多い。

 中枢神経がしっかり機能していないために、体の成長とともに、様々な症状が表れる。例えば、背中の手術をした場所よりも下の動きが悪くなってしまう。私は、特殊な靴を履けば、つえを使って歩けるが、知美さんは移動時に車いすを使っている。

 見た目ではわからないが、排泄(はいせつ)に関する障害の生活への影響は大きい。私はおしっこもうんちも、溜まってきた、あるいは排泄しているという感覚はない。きっと彼女も同じだろうと思う。

泌尿器科、小児外科、整形外科……

 以前に会った時には、まだかわいらしいという印象だった少女が、すてきな大人の女性になって目の前に現れたことに、まだ私は戸惑っている。

 「体の調子は落ち着いているんですけど、病院には行かないといけないからねぇ~」

 知美さんは車いすを使って、職場や病院に一人で通っている。泌尿器科、小児外科、整形外科など、複数の病院の様々な診療科にかかる必要がある。通院だけでも、結構な労力だ。

 しかし、それによって、症状が落ち着き、日々の生活も送れるのだから、致し方ないともいえる。

「みんな、元気なんです」

 二分脊椎症は、約3000人に1人ぐらいの割合で、生まれてくる。

 ビタミンの一つの「葉酸」を妊婦が摂取する量によって、発症の割合が下がるという研究報告があり、予防には葉酸摂取が勧められている。

 ただ、詳しい原因は不明で、葉酸をきちんと摂取していても発症する例もあり、発症を完璧に予防することはできない病気だ。そして、症状も様々だ。

 背中の部分に異常があることは共通しているが、症状が全く出ない人もいる。つまり、二分脊椎症だとわからずにそのまま成長し、日々暮らしている方もいるそうだ。

 逆に、下半身が全く動かせない人や、感覚のない部位をけがしても気づかずに菌が入り命を落とす人もいる。

 「でもね。二分脊椎症の仲間に共通していることがあるんですよ……」。母親の宇佐美さんが言い出した。

 「みんな、元気なんです」

 そうだ。確かにそうだ。私も、知美さんも、二分脊椎症の仲間の多くも、本当に元気だ。

 病気を持たないことと、元気で毎日を過ごすことは、次元が違う。

 追加のスイーツのご注文をいただいた。チーズケーキを親子で楽しそうに味わっている。彼女の笑顔を見ていると、充実した人生があることを実感する。(鈴木信行 患医ねっと代表)

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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