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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

特定健診対象者の12.4%が緑内障 眼科の精密検査で判明 自覚症状は乏しく

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精密な検査を行うことで発見率が上昇

 緑内障の有病率については、日本緑内障学会などが岐阜県多治見市で約20年前に行った疫学調査(多治見スタディー)で、40歳以上の約5%という結果が従来、知られている。

 今回の調査で12.4%と高い数値が示されたことについて、山田教授は二つの要因が考えられると説明する。

 ひとつは、対象年齢は40歳~74歳であるものの、実際に眼科検査を受けた人は60歳以上が75%を占め、平均年齢は63.7歳と高かったことだ。多治見スタディーでも70歳では10%という有病率となっており、年齢が関係している可能性がある。

 もうひとつは、今回の調査は、OCT検査や、緑内障の確定診断に使う見える範囲を調べる検査(静的な視野検査)を全員に行ったことだ。静的な視野検査は両目で20~30分かかり、通常の検診では行われない。今回は研究として精密な検査を実施したことで、眼底検査などによる一般的な検査よりも検出率が上がったと考えられるという。

「特定健診を眼科検診の機会に」

 山田教授によると、特定健診における眼底検査の意味合いは、動脈硬化など全身の血管状態をみることがもともとの目的であって、実施される割合は非常に少なかった。2018年度に基準が緩和され、以前よりは増えているとみられるものの、さらに多くの人が受けられることが望まれるという。

 また、OCTはかつて、大病院にしかない高価な検査機器だったが、今では眼科クリニックでも半数程度で備えているほか、人間ドックなどでも取り入れられつつあるという。

 山田教授は「緑内障は初期から中等度までほとんど自覚症状がなく、検査を受ける機会がないと発見が難しい。眼底検査は、様々な網膜神経疾患をスクリーニングすることができ、特定健診を目の検診の機会にもしていただきたいと願っている」としている。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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