山中龍宏「子どもを守る」
医療・健康・介護のコラム
ソファに立って歯磨き中の4歳男児が転倒 救急搬送も医師は「経過観察」…別の病院で「頸椎の脇に歯ブラシが」
様々な議論を起こした割りばし死事故
事例2 :2013年1月、2歳7か月男児。朝食後、リビングのこたつの上に飲み物が入ったストロー付きコップを置いて、男児が飲んでいるのを母親は見た。その後、母親が離れた場所にいたところ、激しく泣く声を聞き、見に行ったところ、男児が座り込んで泣いていた。姉が「コップを持って歩いていて転んだ」と伝えた。口の中から出血しており、懐中電灯で口の中を見ると、軟口蓋の粘膜がそげてぶら下がっていた。救急外来を受診し、入院して患部を縫合し、3日後に退院した。
ストローは、コップの底にほぼ固定されている状態で、PET樹脂製のため硬くて曲がらないものでした。ストローの先はコップの蓋から約7.5センチ突き出ていました。この製品の対象年齢は6歳以上とされていますが、それ以下の年齢でも使用される可能性が高いと思われます。予防のためには、軟らかくて簡単に曲がるストローにするとよいと思います。
事例3:1999年7月10日(土)、4歳9か月男児。午後6時過ぎ、盆踊り大会で割り箸にまきつけられた綿菓子をもらい、口にくわえて走っていた際、前のめりに転倒した。割りばしが軟口蓋に突き刺さり、刺さった時に割りばしは折れ、本人は自力で割り箸を口の中から引き抜いて捨てた。一時的に意識を失ったような状態となったが、すぐに回復した。救急車が要請され、午後6時40分に医療機関に搬送された。医師が口の中を見たところ、傷口は小さく、止血していたため、傷口を消毒して炎症止めの薬を塗り、抗菌薬と消炎鎮痛薬を処方して帰宅させた。その後、本人に異常は認められなかった。翌日の午前7時半、チアノーゼが見られたため、医療機関に搬送されたが、午前9時に死亡した。司法解剖の結果、頭蓋内に長さ7.6センチの割りばし片が残存していたことがわかった。
この事例は、刑事裁判、民事裁判となり、病院の診断ミス、口にくわえたまま歩かせた保護者の責任、救急医療の不備など、いろいろな議論が起こりました。予防策としては、綿菓子やりんごあめの芯は、割りばしではなくペーパーロールにすればよいと思います。
これらの事例でわかるように、転んだだけでも重大な事故になる場合があるのです。はさみや、はしやスプーンやフォーク、歯ブラシ、ストロー付きコップ、鉛筆、太鼓のばちなどとがったものを持って転ぶと、顔や目に刺さる危険があります。口に入れたままで転ぶと、口の中に突き刺さることがあります。とがったものを持って歩くことはやめさせましょう。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)
2 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。