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がんのサポーティブケア

医療・健康・介護のコラム

抗がん剤治療の副作用による末梢神経障害 正座をした後のようなしびれが手や足に 症状が長引くことも

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科学的な根拠のない薬剤使用の現実 学会で「手引き」を作成

「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き」(日本がんサポーティブケア学会)より引用。2015年のがん薬物療法専門医へのアンケート結果から。 「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き」(日本がんサポーティブケア学会)より引用。2015年のがん薬物療法専門医へのアンケート結果から。

「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き」(日本がんサポーティブケア学会)より引用。2015年のがん薬物療法専門医へのアンケート結果から。

――実際の臨床では、どんな治療が行われているのでしょうか。

 日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医に対して2015年に行った私たちの調査では、95%以上が一般的な末梢神経障害治療薬の「プレガバリン」(商品名リリカ)を処方することがあると答えています。

 抗うつ薬の「デュロキセチン」(同サインバルタ)は、半数程度の先生方が処方することがあると答えています。若干のエビデンス(証拠)があるのは、今のところデュロキセチンだけです。

 実際のところは、「使ってみたら良かったので」とか、「他に特にないので使ってみた」といった理由で、様々な種類の薬剤が使われているのが現実です。

――日本がんサポーティブケア学会では、「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き」を2017年に発表されています。作成の理由や目的は何ですか。

 CIPNに対する治療に、どれほどエビデンスがあるのかという疑問や、治療の混乱が何とかならないのかという思いは、かねてからありました。そんな中で2013年に、デュロキセチンの有効性を示す研究論文が世界で初めて出されたことに、非常に衝撃を受けました。

 というのも、それまでCIPNに対して効果が証明された薬は全くなかったからです。にもかかわらず、臨床現場では、ロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)や、欧米では使われないビタミンB12や漢方薬などが多く使われ続けてきました。

――そこで指針作りをと考えたわけですか。

 日本の状況を何とか整理したいと考えていたところに、ちょうど日本がんサポートティブケア学会が発足し、当時の理事長の田村和夫先生とお話しして、「手引き」の作成に取り組むことになりました。

抗うつ薬の「デュロキセチン」(サインバルタ)に「弱い推奨」

――「手引き」で推奨された薬物治療はありますか。

 唯一、「弱い推奨」としたのが、デュロキセチンです。ここ数年、アメリカやヨーロッパでもガイドラインが作られましたが、いずれもデュロキセチンだけが弱い推奨となっていて、他に推奨された薬はないというのが現状です。

――日本で多く使われているプレガバリンやNSAIDsの位置づけは?

 エビデンスはないのですが、あまり混乱を招かないようにという観点から、処方することは「否定しない」「許容する」ということになっています。

――「手引き」を発表したことで、臨床現場に変化はありましたか。

 日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医に対する調査は、手引きが出る前の2015年と出た後の2019年に、全く同じ内容でアンケートをしました。その結果、唯一「弱い推奨」とされたデュロキセチンを使う頻度がぐっと増えて、それ以外のほとんどの薬は減っていました。ただ、プレガバリンだけは相変わらず多くの医師が使っているというのが現状です。

――その他に研究開発が進められている新薬はありますか。

 抗がん剤から神経を保護する作用がある神経保護薬で、非常に期待されていた薬があったのですが、残念ながら副作用が多いということで欧米での試験が中止になっているようです。

――薬以外ではどんな治療法が試されていますか。

 冷却療法や圧迫療法が試みられています。抗がん剤が手や足に行きにくいように血管を冷やしたり圧迫したりして、予防しようというものです。冷却療法には一応のエビデンスはあるのですが、凍傷を引き起こすなどの問題があり、実臨床では難しい面があります。

 あとは、運動です。運動をすることで、神経障害の軽減に役立つと考えられており、ヨーロッパの指針でははっきり「推奨」とされています。

 また、患者さんの不安が、症状の悪化に影響するという指摘もされています。

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がんのサポーティブケア

 がんやがん治療に伴う副作用が及ぼす痛みやつらさを和らげ、がんと闘う患者を支えるのが「がんのサポーティブケア(支持医療)」です。手術や放射線、薬物療法をはじめとする、がんを治すための医療と車の両輪の関係にあります。この連載では、がんに伴う痩せの悩みや、治療に伴う副作用、痛みや心のケアなど、がんのサポーティブケアが関わるテーマについて月替わりで専門家にインタビューし、研究の最前線や患者・家族らへのアドバイスについて伺います。

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