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街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー

医療・健康・介護のコラム

「音声情報ではわからない」「多機能トイレがないと」…障害のある人が直面する災害避難のバリア

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 ヨミドクターをご覧のみなさま、サービス介助士インストラクターの冨樫正義です。東日本大震災から10年が経過しました。東日本大震災では、被災地全体の死者数の約6割が65歳以上の高齢者で、障害のある人の死亡率は、被災住民全体の死亡率の約2倍に及びました。今回はあらためて避難が難しい人(避難行動要支援者)が直面している避難におけるバリアついて見ていきましょう。

障害のある人は「避難準備」で行動開始

「音声情報ではわからない」「多機能トイレがないと」…障害のある人が直面する災害避難のバリア

障害のある人に届く情報提供とは(2011年、福島県郡山市で)

 災害が発生する恐れがあるとき、行政からはどのような情報が出されるのでしょうか。市町村長は災害から住民を守るため、災害対策基本法に基づき、以下の避難勧告・指示などを出すことができます。

1.避難準備・高齢者等避難開始(警戒レベル3)
 一般の人にとっては避難準備の呼びかけですが、避難行動要支援者とその避難支援者に対しては、実際の避難開始を意味する呼びかけです。単独での移動が困難な高齢者や障害者、病気・けがなどで移動が困難な人は、一般の人と同じタイミングで避難を開始すると、逃げ遅れる確率が高くなりますので、このタイミングで避難をします。
2.避難勧告(警戒レベル4)
 通常の避難行動ができる住民に「避難を開始するよう勧め促す」ために発令します。
3.避難指示(緊急)(警戒レベル4)

 通常の避難行動ができる住民に「避難をただちに終えるよう促す」ために出します。避難勧告よりも時間が切迫している、もしくは深刻な被害が出ると予測されるケースです。なお、現在、避難情報の一本化が進められており、避難勧告が廃止され、避難指示に一本化される予定です。このことにより、避難指示を待つのではなく、自身の判断で避難をする意識がより必要になると言えます。

重要な「避難所のトイレ情報」

 では、障害のある人にとって、避難準備・高齢者等避難開始などが発令され、避難する際に、どのような障壁があるのでしょうか。実際に東日本大震災を経験した障害のある人の声を紹介します。

■肢体不自由者

  • 多機能トイレはあるのか、ベッドはあるのかなどの情報がなければ、避難所に行くことを 躊躇(ちゅうちょ) してしまいます。
  • 避難所は普段、学校として利用されていることが多く、健常者が利用することを前提に造られ、障害者の利用が想定されていません。そのため、どのような施設で、どのようなトイレがあるのかが分からないと避難が難しいです。
  • 東日本大震災では、実際に指定されている避難所へ避難しましたが、和式トイレしかなかったので、ここでは生活できないと考え、自宅に戻ってしまいました。
  • 東日本大震災では、福祉避難所が開設されているのかも不明でした。とにかく情報がなく、行動することができませんでした。

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街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー

冨樫 正義(とがし・まさよし)

冨樫 正義(とがし・まさよし)
 1973年、埼玉県生まれ。桜美林大学大学院卒(老年学研究科修士号)。東洋大学国際観光学部非常勤講師。法律事務所、不動産関係会社、人事コンサルタント、専門学校講師を経て、現在、サービス介助士、防災介助士、認知症介助士などを認定・運営する団体「公益財団法人日本ケアフィット共育機構」(0120‐0610‐64)のインストラクターとして、年間50社以上の企業対象研修を担当するほか、企業のバリアフリー・ユニバーサルデザインのコンサルティングも行う。

平野 恵(ひらの・めぐみ)

平野 恵(ひらの・めぐみ)
 視覚障害と軽度の移動機能障害がある。2歳から4歳まで盲学校幼稚部、その後、小学校から高校まで養護学校(現在の特別支援学校)に通い、高校まで車いすを使用して生活をしていたが、大学入学後の訓練を経て、現在では白杖のみで歩行している。日本ケアフィット共育機構事務局に勤務。サービス介助士アドバイザー。

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