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後閑愛実&ゆき味「看取りのチカラ」

 大切な人を看取(みと)るとき、人は何を思い、看取りは、残された人々にどんなチカラを与えてくれるのか。後悔しない看取りについて、現役の病院看護師、後閑愛実さんが、ゆきさん作画の漫画と文章でつづります。

医療・健康・介護のコラム

「看取りのチカラ」第13話 最期まで穏やかに過ごすために必要なものとは 無理な延命治療がもたらす悲劇

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医療行為という名の下での「拷問」

 医療は、「あの時、あの医療を受けたことで、死ななくてよかった」と、その後を幸せに生きるための手段の一つです。しかし、無理な治療を施したことで、最期まで苦しみ続ける人も少なくありません。

 老衰の段階の人たちは「自然に枯れる」ことが、最も苦痛が少ないというのを何度も経験してきました。老衰は年をとって亡くなることではありません。体のどこか一か所が悪いというわけではなく、いろんな臓器の機能低下が同時に進行します。だんだんと、あるいは階段を下るように弱っていき、眠っている時間が長くなって、そのまま眠るように亡くなるといった感じです。老衰は医療では治せません。

 「食べられなくなったら点滴を」という家族もいますが、病院でも在宅医療でも、老衰の段階では症状によって点滴をしないこともありますし、しても一日500CC以下ということもあります。今が最善のバランスだから、それを崩さないために「あえて、しない」という判断です。老衰の段階では、無理やり栄養を入れたり点滴したりしても、水分の代謝がうまくできず、体がむくんだり痰(たん)が増えたりして、苦痛を伴うことがあるからです。

 無理な延命治療を続けた体は、意思疎通が困難なまま、皮膚が腐っていくうえ、口の中やあちこちから出血するようになります。昔、目尻が切れて血の涙を流しながら、ふり絞るような声で「やめて」と言われたことがありました。医療というのは名ばかりで、拷問をしているのではないかと、胸が締め付けられる思いでした。本当に、申し訳ないことをしていました。

 不快な治療を拒否して、患者さん自身が点滴や管を抜いてしまうこともあります。そういう場合、病院では患者さんの手にミトン(指のない手袋)を付けたり、ベッドに縛りつけて動けなくする「抑制」をすることがあります。医学的な正解と本人の人生にとっての正解は、イコールとは限りません。その医療が本当に必要かどうか、本人も交え、家族と医療者が一緒になって考えていくことを願っています。

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mitorinochikara

後閑愛実&ゆき味「看取りのチカラ」
後閑愛実(ごかん・めぐみ)

原案・執筆 後閑 愛実(ごかん・めぐみ)
看護師
 群馬パース看護短期大学卒業後、2003年より看護師として病院に勤務。1000人以上の患者と関わる中で、様々な患者を看取(みと)る。看取ってきた患者から学んだことを生かし、看護師をしながら、13年から看取りの際のコミュニケーション方法について、研修や講演を通して伝えている。著書に「後悔しない死の迎え方」(ダイヤモンド社)。「月刊ナーシング」の連載「まんがでわかるはじめての看取りケア」の原作執筆担当(20年3月終了)。

ゆき味(ゆきみ)

作画 ゆき味(ゆきみ)
マルチクリエーター
 2017年、多摩美術大学卒業後、フリーの作家として、立体造形・映像作品・グラフィックデザイン・漫画制作を中心に活動。漫画やイラストの制作、MV制作、オリジナルキャラクターグッズ、広告やパッケージのデザインなど、幅広い制作を手がける。「まんがでわかるはじめての看取りケア」作画担当。NPO法人さかうえのプロモーション動画「加部安の時計~天明の祈り~」制作、編集担当。19年、YouTubeに「ゆき味アートチャンネル」を開設。

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