宋美玄のわーままクリニック
妊娠・育児・性の悩み
低出生体重児が増えたのは妊婦のせいですか? 前時代的な「上から目線の体重指導」は今も
日本産科婦人科学会が、このたび、妊婦の体重増加について新たな目安をまとめ、これをもとに厚労省が近く指針を改定すると報じられました。全国600か所の産科施設へのアンケートと、2015~17年に出産した40万人のデータを分析した結果とのことです。これにより、妊娠前のBMIが18.5未満の「やせ形」の人は、06年に厚労省が示した指針では妊娠中に「9~12キロ」の体重増加が目安とされていたものが、「12~15キロ」に、18.5以上25未満の標準体重の人は、「7~12キロ」であったものが「10~13キロ」に改定されます。BMI25以上は「個別対応」となっていましたが、25以上30未満では「7~10キロ」とされ、30以上はこれまで通り個別対応となるそうです。全体的に、「今までより妊娠中に体重を増やしたほうがよい」という方向になりました。
「妊婦のやせ志向」が原因の一つ?
妊婦健診を行っていると、妊婦さんたちが体重を非常に気にされているのが分かります。妊娠するまでは見たことのないような体重になることに加え、日本では昔から、「妊娠中は体重を増やしすぎてはいけない」という共通認識があったからです。しかし、普通に妊娠生活を送っていても、従来の目安を超えてしまう人は珍しくありません。今回の改定は、妊婦さんの診察をしている私にとって、感覚的にとてもうなずけます。
特に、コロナ禍でステイホームが定着してからは、体重増加のスピードが早くなった方がとても多くなりました。感染対策のためテレワークにすると、運動量が減るのは仕方のないことなのに、体重増加に罪悪感を抱きながら妊娠生活を送られることを気の毒に感じていました。今後、新しい目安をお伝えすれば、多くの妊婦さんを安心させることができます。
この改定の背景には、体重2500グラム未満の「低出生体重児」の割合が、日本では約40年間でおよそ1.8倍となり、他の先進国と比べて異例の事態となっていることがあります。生まれた時に低体重だと、大人になってから糖尿病や高血圧になりやすいとの報告もあり、問題視されてきました。しかし、日本産科婦人科学会が、「妊婦のやせ志向」が原因の一つとの見解を示したことについて、私は異論を唱えます。
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