宋美玄のわーままクリニック
医療・健康・介護のコラム
低出生体重児が増えたのは妊婦のせいですか? 前時代的な「上から目線の体重指導」は今も
「指導」を超えて叱責される妊婦さんも
昔から妊婦健診では、厳しい体重指導が行われてきました。特に、「自然出産」を提唱する産院では、「自分の力で産みたかったら体重の自己管理を」と自己責任論的に指導されることも多く、「指導」を超えて叱責される妊婦さんも多くいました。産院によっては、「うちは8キロまで」「体重増加は、つわりで減ったところからカウントする」という独自の基準を決めているところもあり、妊娠して逆に食べる量を減らしたという方も少なくありません。
しかし、赤ちゃんと羊水、大きくなる子宮の筋肉だけでも10キロくらいになり、さらに大量に分泌されるエストロゲン(女性ホルモン)のためにお尻や肩に皮下脂肪が増えるのですから、それなりに体重が増えることは、妊娠すれば体に自然に起こることなのです。
このことをツイッターでつぶやいたところ、「めちゃくちゃ説教された」「次までに減らしてくるように言われた」「大人になって、赤の他人にあそこまで叱られたのは初めて」などの声が続々と集まり、日本の産婦人科では上から目線の体重指導がまだまだ健在なのだな、と軽いめまいがしました。私も長らくお産の仕事をしていましたので、肥満体形や体重が過度に増加した妊婦さんの難産や合併症を数多く経験しています。しかし、あつものに懲りてなますを吹くように、生理的な範囲の体重増加すら認めないというのはおかしいし、体重が増えなければ母子ともに健康というわけではありません。
パターナルで過度な体重指導は前時代的
パターナル(権威主義)で過度な体重指導は前時代的だと思います。そして、このような指導が依然として行われているのに、低出生体重児が増加している原因を「体形を気にする妊婦さんが多いから」としてしまうことには違和感があります。
今はもう、医療従事者が患者さんを「指導」「管理」する時代ではなくなってきていると感じます(少なくとも妊娠出産や女性ヘルスケアの分野においては)。妊娠中の体重増加に限らず、上から目線やパターナルな態度は改め、健康やライフスタイルの「お手伝い」をするという意識を持って診療にあたりたいと思います。(宋美玄 産婦人科医)
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