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花粉症治療…注射薬など選択肢広がる

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 鼻水や鼻づまり、くしゃみなどが起こる花粉症は、国民病とも呼ばれています。日本人の4割近くを占めるとされるスギ花粉症に対する新たな注射薬が登場するなどしていて、治療の選択肢が広がっています。(西田真奈美)

花粉症治療…注射薬など選択肢広がる

  日本人の4割発症

 日本では、約60種類の植物が花粉症の原因になっていると報告されています。春の花粉症はスギやヒノキが中心です。日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会の調査では、2019年にスギ花粉症だった人の割合は、38・8%でした。

 目や鼻から花粉が体内に入ると、体が異物(抗原)として認識し、体内では抗原に対抗しようと、リンパ球が「IgE抗体」を作ります。IgE抗体は、免疫や炎症に関わる「マスト細胞」と結びつき、花粉の次の侵入に備えます。

 花粉が体内に入るとIgE抗体が察知し、マスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され、アレルギー反応が起こります。鼻水や鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみといった症状が出るのは、そのためです。

 症状を抑えるには、抗ヒスタミン薬やステロイド薬を使います。しかし、重い患者の場合、薬を使っても症状は治まりません。

 重いスギ花粉症の患者に対し19年12月、注射薬「ゾレア」が保険適用されました。IgE抗体とマスト細胞の結合を防ぎ、アレルギー反応が起こらないようにします。

 12歳以上で、〈1〉前年、治療をしても1日あたりのくしゃみや鼻をかんだ回数が11回以上だった〈2〉抗ヒスタミン薬を1週間以上投与しても効果が十分でない〈3〉血液中にスギ花粉に対するIgE抗体が一定以上ある――といった人が対象です。

 ゾレアは、4週間か2週間に1回、投与します。頻度や量は患者の体重と血液中のIgE濃度で決まります。1回あたり75~600ミリ・グラムを使用し、150ミリ・グラムの費用は約2万9000円。3割負担だと約9000円です。ゾレアを投与しても、抗ヒスタミン薬は使い続ける必要があります。

 昨年4月にゾレアを投与した東京都の女性(37)は、2~3日でつらい症状が落ち着き、「花粉症を忘れるほど生活が楽になった」と話しています。

  換気にもひと工夫

 最近は、体質を改善させて花粉に反応しないようにする「舌下免疫療法」も実施されています。スギ花粉のエキスを含んだ薬を舌の下に置き、花粉に慣れさせます。ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック(東京都品川区)院長の永倉仁史さんは、「花粉シーズン後に、花粉症を根本的に治したい人に勧めています」と説明しています。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況では、くしゃみや鼻水が感染を広げる可能性があります。日本医科大耳鼻咽喉科教授の大久保公裕さんは、「花粉症の症状を徹底的に抑え込むのがエチケットです。つらい症状がある人は、医療機関で治療を受けましょう」と呼びかけています。

 大久保さんは〈1〉ポケットティッシュと消毒液を持ち歩く〈2〉マスクを二重につける〈3〉部屋の換気をする際は、網戸やレースのカーテンを閉めた状態で行う〈4〉室内を加湿して花粉の飛散を抑える――といった対策を勧めています。

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