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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

子どもの近視 まだ全面解禁とはいえない「小児のオルソケラトロジー」…睡眠中に装着する特殊なコンタクトレンズ

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子どもの近視 まだ全面解禁とはいえない「小児のオルソケラトロジー」…睡眠中に装着する特殊なコンタクトレンズ

 筆者の年齢(71歳)になると小、中学生の孫を持つ人が多くなります。先日、高校の同級生2人から孫の近視について、相次いで相談がありました。

 高校時代以来、強めの近視に悩まされたことから、孫が同じようにならないようにしたいというのが「おじいちゃんたち」の希望なのです。

 「近視は遺伝的要素と環境因子によって成立するが、前者の要素が強いから、近視化を防ぐというのは容易な話ではない」という常識的な内容の説明をまず私はしました。

それは分かったとした上で、「では、子どものオルソケラトロジーについてはどうか」と質問してきたのです。

 この「オルソケラトロジー」という治療法は、眼球の前面を構成する角膜のカーブが強くなっている近視の目に対し、専用のハードコンタクトレンズを就寝時だけ装着させて、角膜のカーブを 扁平(へんぺい) 化させる治療です。扁平化すれば、近視の度が軽減しますから、昼間は裸眼でもよく見えることになります。この扁平化は可逆的変化ですので、基本的には毎晩寝る前にレンズを装用することになります。

 眼鏡やコンタクトレンズから解放され、レーザーで角膜を削って視力を矯正するレーシックのような手術までする必要のない矯正法として、海外では50年以上の歴史があり、1990年代以降、世界的に普及し始めました。

 日本ではこれまで、特に未成年への適用には慎重で、ようやく日本コンタクトレンズ学会が「慎重処方」という形のガイドラインを出したのが2017年でした。

 小児は組織が柔らかいため効果が上がる、また、最近では長期的にみても近視化を抑制できるといったデータも出てきたなどのメリットがあります。

 しかし、健常な眼球への治療であり、小児(通常8歳以上)では治療期間が長期になることから、そこまでの安全性は保証できないのではないかとの見解もあり、慎重な考え方になっています。それゆえ、現在は、一部の施設のみで自由診療(料金体系は施設ごとに多少違います)で行われているだけの治療で、保険は適用外です。

 私の勤務する眼科専門病院では、2年余り前から小児の治療を開始しています。担当医によりますと、これまでに60例以上トラブルなしに進んでいるそうです。

 「特に親がコンタクトレンズ装用者だと親子ともに受け入れやすく、普段は日中に装用するレンズを、夜の装用に変更するだけというふうに考えれば抵抗感はなく、昼間は裸眼で過ごせる快適さを享受できます」と話してくれました。

 適用範囲は、-1から-4ディオプトリー(ディオプトリーは度数の単位)までの、強すぎない近視で、乱視が強くない場合です。親子ともに治療目的や内容を理解し、使用レンズの洗浄をやや念入りに行う、定期検査を受けるなどの注意点を守れて、眼科の適応検査に合格すればすぐに始められます。

 近視をただ悪者にするのでなく、こうしたテクノロジーをうまく利用することで、近視のデメリットから逃れることができるのであれば、私はよい選択肢だと考えます。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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