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「くすりの富山」への信頼揺るがす…後発薬国内トップの日医工、品質より出荷優先

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 ジェネリック医薬品(後発薬)製造大手「日医工」(富山市)が富山県から約1か月の業務停止命令を受けた問題で、後発薬業界が抱えるひずみが浮き彫りになった。国が後発薬の使用を促す中、国内トップに駆け上がった日医工は約10年もの間、不正に手を染めていた。業界全体の信頼を揺るがし、関係者からは懸念の声が広がる。(中村僚、小田倉陽平)

■「逸脱会議」で不正主導

「くすりの富山」への信頼揺るがす…後発薬国内トップの日医工、品質より出荷優先

日医工の富山第一工場(富山県滑川市で)

 日医工富山第一工場(富山県滑川市)で不正が始まったのは2010年前後。製品の出荷試験で不適合(逸脱)があった場合、「逸脱管理責任者」が数人から十数人を招集する「逸脱会議」と称する会議を開催。逸脱品の対応を検討した。本来は廃棄しなければならない錠剤を砕いて作り直したり、サンプル試験をやり直したりするなど国が認めていない手順を繰り返した。

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 不正は、当時の生産本部長の指示を受け、逸脱管理責任者を兼ねる医薬品製造管理者が、逸脱会議の場で主導的に行っていた。内部では反対の声もあったというが、見過ごされてきた。

 こうした実態は、調査を行ったTMI総合法律事務所(東京)の調査報告書などで発覚した。日医工の田村友一社長は3日の記者会見で「欠品、回収は営業部門への負担が大きく、生産部門が営業への配慮も含めて欠品、回収の回避を優先する風土が徐々に醸成されていた」と釈明した。

■極限までコスト削減

 不正の裏には、後発薬の課題が透けて見える。

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 厚生労働省によると、国内の後発薬の使用割合は、05年は32・5%だったが、使用を促進する国の政策で20年には78・3%(速報値)を占めた。後発薬は先発医薬品(新薬)の特許が切れた後、同じ有効成分で作られる。開発に巨額が必要な先発薬に比べて安価で済む。国は少子高齢化で伸びる医療費を抑えようと、後発薬の使用を07年頃から推進。20年までに使用割合を80%とする目標にもほぼ到達している。

 日医工の売上高も、国の政策に歩調を合わせるように右肩上がりだった。05年11月期の売上高は約243億円だったが、20年3月期には約1900億円に成長。その裏で14~16年頃、逸脱会議や不正の件数は増えていた。

 日医工は「製造スケジュールが詰まり、出荷を優先した」などと県に説明する。田村社長は「現場に無理をさせすぎた。品質保証、量的供給、安定供給という3点について優先順位のバランスが崩れてしまった」と話した。県内の製薬企業関係者は「後発薬業界は極限までコストを削り、問題が起きたのではないか」とみる。

安定供給支障なし

 日医工に対する約1か月の業務停止命令で懸念されるのが医薬品の供給だ。国は「直ちに欠品が生じるようなことはない」として、薬の安定供給に支障は生じないとしている。

 厚生労働省経済課によると、医薬品の種類にもよるが、通常は市場に2、3か月分の在庫があるという。そのため、約1か月の業務停止であれば賄えるとしている。今後、薬の安定供給に問題が出ないよう「注視はしていく」としている。

 県は日医工に対し、必要な場合は他社に増産を依頼するよう求めている。新田知事は3日、報道陣に「大きな混乱にはならないと考えている」と述べ、県民に冷静な対応を呼びかけた。

「対岸の火事とは思えない」

 後発薬を巡っては2月、福井県の製薬会社「小林化工」が爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入した問題で、同県から116日間の業務停止命令を受けたばかり。後発薬の信頼に関わる問題に発展している。

 富山県内の後発薬企業の担当者は「リーディングカンパニーの不祥事だ。小林化工の問題もあり、対岸の火事とは思えない。社内で品質などの再チェックを行った」と強調した。

 県薬業連合会の中井敏郎会長は「県を代表する日医工の今回の事態が、これまで築いてきた『くすりの富山』への信頼を揺るがしかねないことを大変憂慮する」と危機感をあらわにする。全国39社で作る「日本ジェネリック製薬協会」(東京)は会員の日医工に対し、厳正な対応を検討している。佐藤岳幸理事長は「患者や関係者に心よりおわびする。他社が同じようなことを起こさないためにも、再発防止に取り組む」と話した。

 薬を使用する現場からも不安の声が。県薬剤師会の西尾公秀会長によると、患者から「日医工の薬を飲んでいるが大丈夫か」などと、不安の電話が相次いでいるという。西尾会長は「信頼してきただけにショックだ。今後も日医工の薬を飲むかどうか、最終的に決めるのは患者だ。薬剤師が自信を持ってすすめられるメーカーであってほしい」とくぎを刺した。

  日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会の武藤正樹代表理事の話 「信じがたい不正だ。後発薬メーカーは市場プレッシャーが大きかったと思われる。国は一度立ち止まって、品質を最優先に置く方針を打ち出すべきだ。人材育成なども必要だ」

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