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HPVワクチン、重篤な副反応に関連せず アジア発のリアルワールドデータ

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 韓国では2016年に女児へのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種が予防接種プログラムに導入されたが、リアルワールドでの安全性に関する情報は欧米発のものがほとんどで、アジア人におけるエビデンスは限定的だった。そこで、韓国・Sungkyunkwan UniversityのDongwon Yoon氏らは同国におけるHPVワクチンの接種と33項目の重篤な副反応との関連について検討。同ワクチン接種による副反応の有意なリスク上昇は認められなかったとの結果をBMJ( 2021;372:m4931 )に発表した。

2018年の1回目接種率は87.2%

HPVワクチン、重篤な副反応に関連せず アジア発のリアルワールドデータ

(C)Getty Images ※画像はイメージです

 2012年にHPV関連がんと診断された女性は世界で約63万人に上り、このうち約53万人(84%)は子宮頸がんだった。こうした中、世界保健機関(WHO)は9~14歳の女児に対する優先的なHPVワクチン接種を推奨。2019年時点で124カ国が予防接種プログラムに同ワクチン接種を導入している。

 韓国では2016年、国の予防接種プログラムに12~13歳の女児に対する2価または4価のHPVワクチンを2回接種するスケジュールが組み込まれた。1回目の接種率は、導入年の61.5%から2018年には87.2%まで上昇したという。

 一方、HPVワクチンの安全性を危惧する声もある。韓国の調査では、子供がHPVワクチンを接種することを望まない親の73.5%が、その理由として重篤な副反応への不安を挙げていた。

 そこでYoon氏らは、韓国の女児におけるHPVワクチンの接種と重篤な副反応の関連について検討するため、韓国の予防接種登録情報システム(Korea Immunization Registry Information System)および医療情報データベース(National Health Information Database)から2017~19年のデータを抽出、解析した。

44万1,399人の女児を解析

 解析には2017年にHPV、日本脳炎、三種混合(破傷風、ジフテリア、百日咳)のいずれかのワクチン接種歴がある女児のうち、基準を満たした11~14歳の女児44万1,399人を組み入れた。このうち38万2,020人にHPVワクチンの接種歴(接種回数は計42万9,377回)があり(接種群)、5万9,379人は接種歴がなかった(非接種群)。

 重篤な副反応は、内分泌疾患(バセドウ病、橋本病など)、消化器疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)、心血管疾患(レイノー病、静脈血栓塞栓症など)、筋骨格系疾患(強直性脊柱炎、ベーチェット病など)、血液疾患(特発性血小板減少性紫斑病など)、皮膚疾患(結節性紅斑など)、神経疾患(ベル麻痺、てんかん、ナルコレプシーなど)、結核などの事前に規定した33項目について評価した。また、これらの副反応発生の追跡期間はワクチン接種後1年間とした。

片頭痛のみわずかにリスクが上昇

 解析の結果、非接種群と比べて接種群で有意なリスクの上昇が認められた副反応は片頭痛のみ(調整後の発生率比1.11、95%CI 1.02~1.22)で、その上昇度もわずかであった。一方、それ以外の32項目について有意なリスク上昇は見られなかった。

 また、自己対照デザインを用いた二次解析では、片頭痛を含む全ての副反応にHPVワクチン接種との有意な関連は認められなかった(片頭痛の調整後相対リスク0.67、95%CI 0.58~0.78)。

 Yoon氏らは、日本における2013~19年のHPVワクチンの接種控えによる影響で約5,000例の子宮頸がんによる超過死亡がもたらされるとの推計( Lancet Public Health 2020;5:e223-e234 )に言及し、「HPVワクチンの接種控えが子宮頸がんによる死亡に与える影響の強さを考慮すると、HPVワクチンの安全性を確立し、市民の不安を軽減することが不可欠だ」と指摘。その上で、「今回示された韓国の女児におけるHPVワクチンの安全性プロファイルの結果は、欧米の集団におけるエビデンスと一致していた」と結論している。(岬りり子)

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