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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

目が悪くなるから、いい加減にしなさい…と頭ごなしに言う前に、子どもの視覚環境を見直そう

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目が悪くなるから、いい加減にしなさい…と頭ごなしに言う前に、子どもの視覚環境を見直そう

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は、大人のみならず子どもたちの生活にも少なからぬ影響を及ぼしています。元々、外遊びをしない子どもが増えているところに大声を上げて遊ぶ機会はますます減っていますし、学校や塾ではオンライン授業が増えています。

 私の孫たちも屋内でコミック、ゲーム、スマホ、動画サイトばかり見ており、一体いつ人間らしい思考と実践を磨く時間を持つのだろうかと、やきもきしてしまいます。

 「目が悪くなるから、いい加減にしなさい」

 そんな、大人の叱る声が聞こえてきそうですが、頭ごなしのそれは説得力に乏しく、効果が薄いのではないでしょうか。

 しかし、屋外で遊ぶ時間が長いほど近視の抑制につながることや、スマートフォンを近い距離で長時間使うことによる内斜視( 「スマホで子どもの斜視が増加?…韓国で研究論文、日本も同じ傾向か」 )や近視化を示す国内外の研究は蓄積されてきていますので、真剣に考えるべきテーマではあります。

 近視は、無限遠を見た(ピントを合わせるための毛様体という筋肉を安静状態にした)時、凹レンズで矯正しないと網膜にピントが合わない状態をいいます。近い方は比較的見やすいので「近視」という名称になっています。

 スマホを使う時、パソコンやテレビの画面を見る時よりも、ずっと近い距離(たとえば15センチ以内)で画面を見ています。子どもの目の調節力(ピントを合わせる力)は柔軟なので、大半の子どもはその距離でもよく見えます。それに疲れるとか、見えにくいといった自覚症状は子どもではまず出てきませんので、単に「目が悪くなるから」と言われても、子どもたちにはピンとこないのです。

 近い距離を見る近方視を長く続けると、目の安静状態がより近視寄りに偏り、さらには毛様体筋も緩みにくくなります。言い換えれば、目が近方視用にセットされたままになり、遠方を見た時のぼやけがひどくなります。これは加齢による老視(調節力の減弱)の初期症状としてよくみられる現象で、「スマホ老眼」などという言い方があるのもうなずけます。それだけでなく、近方視では両目を内側に寄せて物を見るため、それが固定化すれば内斜視が生じてしまうという道理なのです。

 近視は環境因子よりも、遺伝的要素が大きいことは専門家の間では常識ですが、遺伝子は変更できなくても、環境部分は人間の知恵で制御できるのですから、ここはしっかり対応したいところです。程度にもよりますが、近視イコール眼鏡と進む前に、子どもの視覚環境を見直すことから始めてはいかがでしょう。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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