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大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」

医療・健康・介護のコラム

めまいの原因は不整脈の薬、口の苦みは目薬のせい……原因不明の症状を院内の薬剤師が次々と解明

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多剤の服用は副作用の危険が増す……適切に減らすには薬剤師の助けが必要

 また、最近の話題として「ポリファーマシー」という言葉があります。高齢者や多くの病気を持っている患者さんに数多くの薬が処方され、飲み合わせや副作用の危険が増すという問題です。また、薬の種類や数が多いと、飲み忘れや飲み間違いというリスクも増します。薬の種類を減らすには、減らすことのリスクの評価やタイミングなど、主治医は様々な要素を検討しなければなりません。忙しい外来の中で、数分でそれを検討し、患者さんに提案するのは、実は大変難しいのです。当院では、事前に薬剤師がそれを評価し、この患者さんのこの薬はそろそろ減量や中止ができるのではないかという提案がなされます。それを基に主治医は患者さんに提案できるので、ポリファーマシーの患者さんを大幅に減らすことが可能となりました。

晩酌後に薬を飲めない糖尿病患者、薬を朝1回のタイプに変更して改善

 当院では「薬剤師外来」も開設しています。主治医の診察までの待ち時間の間に、薬剤師が、「薬をきちんと飲めているか」「錠剤が大きくて飲みにくくないか」「夜勤中心の仕事で、昼の薬は飲めているか」など、生活の視点も踏まえたアセスメントを行なっています。

 先日は、糖尿病の患者さんで、どうしても朝しか薬が飲めない方がいました。私は、1日2回の薬を処方して、夕食後も必ず飲むように指導していたのですが、晩酌をするとその後の薬は中々飲む気にはなれないとのこと。そこで薬剤師は、別の系統の薬に変更して、1日1回だけの薬にしてみてはどうかという提案をしました。変更後も糖尿病の悪化はなく、むしろ飲み忘れが減り、良好な状態となりました。私はつい医学的なベストを目指して処方してしまうのですが、ベストではなく、ベターな選択が結果的には効果的な治療につながることを改めて気づくこととなったのです。

医師がなんでも知っているわけではない

 調剤をしない薬剤師が赴任して、すでに5年以上が経過しましたが、今ではすっかり「お薬の先生」として患者さんからの信頼を獲得しています。医療・介護・福祉の世界では、「多職種連携」という言葉がクローズアップされています。医療の世界では、どうしても医師がなんでも知っているというイメージがありますが、それぞれの職種がお互いをリスペクトし、専門性を発揮することで、質の高いケアを提供することが可能となるのです。(大橋博樹 医師)

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大橋博樹(おおはし・ひろき)

多摩ファミリークリニック院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。
1974年東京都中野区生まれ。獨協医大卒、武蔵野赤十字病院で臨床研修後、聖マリアンナ医大病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務の後、2006年、川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年、多摩ファミリークリニック開業。

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