大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」
医療・健康・介護のコラム
めまいの原因は不整脈の薬、口の苦みは目薬のせい……原因不明の症状を院内の薬剤師が次々と解明
多摩ファミリークリニックは完全院外処方なので、院内では薬を出さず、患者さんは、処方せんを持って、希望の薬局で薬を処方してもらう仕組みとなっています。しかし、院内には薬剤師がいます。薬を出さない薬剤師? 何をしているか想像できないかもしれませんが、当院ではなくてはならない存在で、副院長をお任せしています。
薬剤師になるためには、6年間の薬学部での勉学を経て、国家試験に合格する必要があります。薬剤師の進路は様々で、病院に勤務したり、製薬会社に就職したり、研究活動をしたり、麻薬取締官(マトリ)になる人もいます。薬のことなら、医師や看護師よりも広くて深い知識を身につけています。

イラスト:赤田咲子
薬剤師は毎日カルテをチェックして薬の問題をチェック
当院の薬剤師の仕事について説明しましょう。毎日、生活習慣病や慢性疾患で定期的に通院している患者さんのカルテを全て事前チェックしています。処方されている薬の飲み合わせは大丈夫か? 副作用が疑われる症状がないか? 細かく確認し、担当医へのメッセージをカルテに残します。
先日はこんな事例がありました。不整脈で当院をかかりつけにしている70歳の女性。不整脈は薬で落ち着いていましたが、ここ最近めまいが出てきたとのこと。診察や検査では脳や心臓、内耳などにめまいの原因となる異常は見当たらず、めまいの薬を処方しましたが、改善がありませんでした。カルテを見た薬剤師は、「不整脈の薬である○○○(薬剤名)ですが、めまいの副作用があります。△△△(薬剤名)はそのような副作用が少ないようです」とコメントしました。私は、まさか薬の副作用とは、と半信半疑でしたが、変更してみると患者さんのめまいの症状は速やかに改善しました。
口の苦みは薬では改善せず、目薬を変更したら消えた
また、50歳代の男性で、口の中が苦いと訴える患者さんがいました。胃酸が逆流する逆流性食道炎を疑い、胃酸を抑える薬を処方しましたが、一向に改善しません。胃カメラでの精密検査を検討していた時に、薬剤師から「A眼科で処方されている目薬なのですが、かなり苦味があって、もしかしてその影響かもしれません」との助言がありました。その目薬が苦いという知識は私には全くなく、本人に聞いてみると、確かに点眼した後に症状が強くなるかもしれないとの重要証言が……。眼科の主治医と相談して、点眼薬を変更したところ、苦味は完全になくなりました。薬剤師の探偵のような推理のおかげで、私が名医になることが少なからずあるのです。
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