武井明「思春期外来の窓から」
医療・健康・介護のコラム
同級生にジロジロ見られ、陰口を言われてる…登校できない高1女子 叱咤せず「過敏さ」理解する
不登校が理由で思春期外来を受診した子どもたちのなかには、教室に入ると周囲に“過敏”になって、登校できなくなる子どもが少なくありません。
入学後、頭痛や腹痛を訴え…
結衣さん(仮名)は、中学校までは学校を休むことはありませんでした。しかし、全日制高校に入学後、頭痛や腹痛を訴えて、朝起きられなくなり、学校を休み出しました。自宅ではゴロゴロして過ごし、やる気がないように見えました。
内科や小児科を受診しましたが、体に異常は認められず、うつ病ではないかと言われました。そのため、お母さんは、結衣さんを連れて思春期外来を訪れました。
「ジロジロと見られたり、陰口を言われたり」
診察時の結衣さんはとても緊張した表情でしたが、主治医からの質問にはしっかりと答えてくれました。
「高校入学後から、教室に入ると、同級生からジロジロと見られている気がします。同級生に陰口を言われたり、バカにされて笑われたりしているような気もします。それで、教室に入ることができないんです。家にいても、学校での嫌なできごとを思い出して気持ちの休まることがありません」
と話してくれました。
結衣さんはうつ病ではなく、周囲に対して過敏になっているために登校できなかったのでした。精神安定剤による治療を開始し、定期的に通院することになりました。
しかし、その後も周囲に対する過敏さが続き、登校できません。結局、結衣さんは、高校1年の秋から休学することを決心しました。
休学し、プレッシャーから解放
休学後に受診した結衣さんは、登校というプレッシャーから解放されたせいか、とてもリラックスした様子で話をしてくれました。自宅ではゲームをしたり、絵を描いたりして過ごしています。中学校時代の友だちとも、時々会うようになりました。
結衣さんのお母さんは当初、休学には断固、反対でした。
「人生には、学校に行くことよりも大変なことがたくさんあります。ここでつまずいてどうするんですか。休学は、甘やかしていることになりませんか?」
と、主治医に詰め寄ったこともありました。
しかし、休学して自宅で元気に過ごす結衣さんを見て、これでいいんだと、少しずつ思えるようになったそうです。
一方、結衣さんのお父さんは、普段は無口な人でしたが、結衣さんが不登校になってから、
「人生は長いんだから、そんなに急いで生きる必要はないよ。休みたい時には休んだらいい」
と、結衣さんやお母さんに話しています。
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