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山中龍宏「子どもを守る」

 子どもは成長するにつれ、事故に遭う危険も増します。誤飲や転倒、水難などを未然に防ぐには、過去の事例から学ぶことが効果的です。小さな命を守るために、大人は何をすればいいのか。子どもの事故防止の第一人者、小児科医の山中龍宏さんとともに考えましょう。

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子どもは0.5秒で転倒 見守っていても間に合わない…防ぐには?

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 子どもは、転んだり、落ちたりして、ケガをすることがよくあります。医療機関を受診する事故の中で、最も頻度が高いのが転倒・転落です。今回は、転倒についてみてみましょう。

子どもは0.5秒で転倒 見守っていても間に合わない…防ぐには?

イラスト:高橋まや

人はなぜ転ぶのか?

 事故による傷害が発生するのは、人の生活機能が変化するからです。どういうことか、ご説明します。

 子どもは、昨日できなかったことが、今日、できるようになります。昨日まで歩けなかった子どもが、今日、歩くようになり、筋力や平衡感覚が未熟なために転ぶのです。高齢者は、昨日までできたことが、今日、できなくなります。昨日まで足が上がっていたのが、今日、足がうまく上がらず、段差につまずいて転ぶのです。小児や高齢者に転倒が多発しているのは、そういう理由です。

 継続的に得られるデータとしては、死亡統計と救急搬送のデータがあります。人口動態統計(2018年)によれば、転倒・転落による子どもの死亡は、0歳(1人)、1~4歳(7人)、5~9歳(1人)、10~14歳(3人)、15~19歳(15人)となっており、これらの数値は毎年、ほとんど変わっていません。死亡するのは、転落によるものが多いと思われます。

 重症度が高い転倒については、「救急車で搬送した転倒」のデータがあります。東京消防庁の 「救急搬送データからみる日常生活事故の実態」年報(2018年) を見ると、救急搬送人員は、年間約13万4000人(2014年から18年の5年間の平均)で、年齢層別に見ると、乳幼児と高齢者が多くなっています。18年の事故を月別にみると、7月が最も多く、次いで8月、12月、1月の順となっています。発生場所は、住宅等居住場所が51%、道路・交通施設が28%でした。

 事故の種類別には、転倒が56%、転落が11%で、この二つで全体の3分の2を占めています。この中の「転倒」について見てみると、搬送人員の総数は8万1338人でした。年齢層は、0~4歳2233人、5~9歳1221人、10~14歳936人、15~19歳693人と、乳幼児が多くなっています。9歳以下では約3分の1、10歳代では約4割を転倒が占めていました。

0歳は抱っこしていた人の転倒

 乳幼児の場合、発生場所で最も多いのは居室です。0歳は抱っこしていた人の転倒によるものですが、1歳から5歳では、転倒して机やテーブル、椅子などの家具にぶつかっています。小学生は、運動施設、道路、階段、公園、スケートボードの順でした。中学生、高校生になると、運動中の事故が多くなり、発生場所は、運動施設、階段、道路、スケートボード、ハードルの順です。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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