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常喜眞理「女のココロとカラダ講座」

医療・健康・介護のコラム

おしっこを「前から後ろに拭く」のは昭和の教え? ペーパーはこすらず優しく当てて

 50代半ばのAさんは排尿時の痛みがつらいと訴えて来院された。 膀胱(ぼうこう) 炎を疑い、尿検査をしてもらうと異常はなかった。陰部の皮膚全体にかゆみと痛みがあるというので、拝見すると、外陰部付近の皮膚はかなり赤みが強く、腫れ上がっていた。かゆみを我慢できず引っかいてしまっているようだ。引っかいたことで炎症を悪化させているのだが、一旦かゆくなると我慢を強いても、できるものではない。

ステロイド使用は控えめに

おしっこを「前から後ろに拭く」のは昭和の教え? ペーパーはこすらず優しく当てて

 Aさんと相談し、抗アレルギー薬の内服で少しかゆみを抑え、陰部の皮膚にはステロイド外用を1週間だけ1日1回寝る前に塗布してもらうことにした。汚れは1日1回、せっけんの泡でそっと皮膚表面を洗うだけで十分だ。日中にかゆみを感じた時には、別途処方した純ワセリンをたっぷり塗って、指の腹でワセリンをすりこむようにするくらいで何とかしのぐよう伝えた。ステロイドの方が炎症を軽減し症状が和らぐことはわかっているが、カビによる皮膚炎を起こしやすくするため、使い続けることはお勧めできない。

足を開き、やや前傾で

 Aさんは以前から同じような症状で苦しんでいたようだ。膀胱炎にもなったことがあるという。皮膚症状の改善や膀胱炎の予防には、実は排尿時の姿勢や排尿後の拭き方も大切であることをAさんに伝えた。排尿時は便座に座ったら少し前傾にかがむ方が良い。膀胱への圧が自然にかかり、排尿がスムースになる。その際、尿の自然な流れを維持して陰部周辺の皮膚がなるべく尿に触れないよう、しっかり足を開くのも大事だ。衣服により難しい場合もあるかもしれないが、なるべく気をつけて欲しい。

尿を吸い取るイメージ

 尿を拭き取るときはこするのではなく、軽く折り畳んだ数枚の紙をそっと当てるだけにしよう。紙を動かさず尿を吸い取るようなイメージだ。皮膚はこするほど傷つく。子供の頃に前から後ろに拭くものだと習った方もいるかもしれないが、今後はこすらない方法を習慣づけてほしい。(常喜眞理 医師)

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常喜 眞理(じょうき・まり)

 家庭医、医学博士
 1963年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医・指導医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医。院長を務める常喜医院(内科、皮膚科)での診療のほか、慈恵医大新橋健診センターでは診療医長として健康診断(人間ドック)の内科診察を行い、婦人科や乳腺外科の診断を担当する。様々な大手企業の産業医でもあり、職場におけるメンタルヘルスのサポートを長年行っている。著書に『オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(すばる舎)、『お医者さんがやっている「加齢ゲーム」で若返る!』(さくら舎)。現在、BS-TBS「Together」に準レギュラー出演中。

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