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鶴若麻理「看護師のノートから~倫理の扉をひらく」

医療・健康・介護のコラム

「私は死ぬんですか」と聞かれ…新型コロナ病棟で看護師が直面していること

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 新型コロナウイルス感染症患者のケアに従事する看護師は、日々の実践のなかで、どのような問題に直面しているのか。いくつかのエピソードを数回にわたって紹介していきます。

報道を見て抱く「特別な恐怖感」

「私は死ぬんですか」と聞かれ…新型コロナ病棟で看護師が直面していること

 新型コロナの患者さんからどんな言葉を投げかけられているのか、ある看護師に聞いてみました。すべての患者さんの意識が清明というわけではありません。そのなかでも、「私は死ぬんですか」とダイレクトに問われることがあるそうです。

 救命救急センターで長年働いていて、他の病気の場合にも同様に尋ねられることがあるそうですが、コロナに関しては、報道などを通して、重症化したり、亡くなったりしたケースのことを耳にし、特別な恐怖感を抱いているのではないかといいます。

 たとえば、酸素マスクを着けている患者さん。看護師から見ると、酸素の供給量が少なくできていて、少しずつ改善されているのですが、本人にとってはマスクは着けたままですし、状況が良くなっていることがわかりません。看護師は、良い兆候や悪くなっていないことをできるだけわかりやすく伝えるようにし、不安を和らげるアプローチをしていくそうです。

 新しい感染症のため、最初の頃は、長期的な見通しや予後もわからず、患者さんへの説明の仕方も不明瞭になってしまい、とてももどかしかったそうです。こうした状況も、患者さんを不安にさせているのではないかと語ります。最近は、少しずつデータが蓄積され、ある程度、先の見通しをふまえた説明ができるようになったといいます。重症患者では、本人ではなく、まず家族に状況を説明することも多いのですが、本人が理解できる状況であれば、肺の画像など視覚的な材料も活用しながら、根拠をもって話をしていくよう心掛けているそうです。

映像での対面でショックを受け

 家族内で感染し、同じ病院に入院している場合、重症度によって入院する病棟が違ってきます。自由に病棟を行き来し面会できるわけではないため、例えば集中治療室に入院中の80代の母を心配し、50代の娘が書いた手紙を、ビニール袋に入れて本人へ見せたこともあったといいます。さらに、タブレット端末で顔を見せ合うこともできます。

 ただ、重症度の高い患者さんの場合、薬剤の影響で意識がもうろうとしている場合もあります。映像を通した対面をすると、思った以上にリアリティーがあり、かえってショックを受けてしまったこともあったそうです。相手の顔を見て安心したいという思いは大切にしつつ、双方にとって負担にならないよう、再会がかなわない場合は、いまはなぜ映像を通して対面することが難しいのかをお話ししながら、様々な方策を検討し、何らかの形で交流できるようタイミングを見計い、対応しているそうです。

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鶴若麻理(つるわか・まり)

 聖路加国際大学教授(生命倫理学・看護倫理学)、同公衆衛生大学院兼任教授。
 早稲田大人間科学部卒業、同大学院博士課程修了後、同大人間総合研究センター助手、聖路加国際大助教を経て、現職。生命倫理の分野から本人の意向を尊重した保健、医療の選択や決定を実現するための支援や仕組みについて、臨床の人々と協働しながら研究・教育に携わっている。2020年度、聖路加国際大学大学院生命倫理学・看護倫理学コース(修士・博士課程)を開講。編著書に「看護師の倫理調整力 専門看護師の実践に学ぶ」(日本看護協会出版会)、「臨床のジレンマ30事例を解決に導く 看護管理と倫理の考えかた」(学研メディカル秀潤社)、「ナラティヴでみる看護倫理」(南江堂)がある。

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