文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

「教えて!ドクター」の健康子育て塾

医療・健康・介護のコラム

20~30代で増加の子宮頸がん、ワクチンで予防できることを知ってほしい

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

ワクチン接種で子宮頸がんリスクが10分の1に

 予防接種をする時、その人は基本的に健康な状態です。だから、接種で体調が悪くなったら「打たない方がよかったのでは?」と思うのは自然な気持ちです。

 人間の体はとても複雑にできているので、それを取り扱う医療には100%とか、0%というものはありません。予防接種も人の体に投与する薬である以上、100%安全とか、リスクが0%とはいえません。メリットとデメリットを考え、デメリットをはるかに上回るメリットがあれば接種を考えることになります。まずはメリットのお話です。

 これまで多くの研究から、HPVワクチン接種がHPV感染を予防することが分かっています。2020年10月に発表されたスウェーデンの研究から、ワクチン接種により子宮頸がんのリスクが63%低下する(かかるリスクが1/3になる)ことが報告されました(3)。特に17歳以下で接種した場合にはリスクが88%低下(かかるリスクが約1/10)と、非常に効果が高いことも分かりました。

 子宮頸がんの予防には検診も重要ですが、検診は異常が出てからしか発見できません。感染そのものを食い止める予防接種との2本立てがとても大切です。

女性にHPVを感染させず、のどのがんの予防にもなるので男性に接種する国も

 また、このワクチンの効果は女性だけではありません。HPV感染症は子宮頸がんだけでなく、咽頭がんなどの原因にもなっています。このなかで特に中咽頭がんはHPVが大きく関わっているとされていますが、このがんは圧倒的に男性にできやすいのです(4)。海外では学童女児だけでなく、男子も定期接種となっている国(ニュージーランド)もあります。男性にも接種することで、女性にHPVを感染させることを予防するだけでなく、男性のがんも防ぐ効果があるのですね。

接種後の神経系の病気が報道されたが、内外の研究でワクチンとの関連を否定

 次にデメリット(副反応)のお話です。ワクチン接種後のよくある副反応として、接種部位の腫れや痛みなどの局所反応があります。これらは数日以内によくなります。まれな副反応としてアナフィラキシーというものがあります。これは接種後にじんましんやせきなどのアレルギー反応がおこるもので、重いと血圧が下がることもあります。接種後30分以内に起こることが多いため、接種後は十分注意して観察を行います。ただ、頻度はまれで約96万接種に1回とされています(5)。

 一時期接種後の多彩な症状が報道されたこともありました。確かに、ワクチンの種類によっては、接種後に神経系の病気が起こることもあります。したがって非常にまれであっても見過ごすことはできません。この点について海外や日本で多くの研究が行われてきました。その中の代表的なものをいくつかご紹介します。

 国際的な非営利学術組織であるコクランによる2018年の報告は、26本の研究結果を統合(約7万人の参加者)して評価したものです(6)。この報告では、ワクチン接種した群とプラセボ群を比較し、ワクチンを接種しても深刻な副反応のリスクは増えないと結論づけています。また日本でも、名古屋市が独自に調査した疫学調査がありますが、「めまい」「体がだるい」「痛み」「集中力の低下」などHPVワクチン接種後の症状と報告されている24の症状について、ワクチン接種との間に関連が認められなかったと報告しています(7)。その他にも多くの研究が行われ、現在ではHPVワクチンの安全性は十分に確認されています。

2 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

20190204-msakamoto-prof200

坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

「教えて!ドクター」の健康子育て塾の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事