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大人の健康を考える「大人び」

医療・健康・介護のコラム

脚の痛み(14)一歩目が危険…高齢者の大腿骨骨折はほとんどが屋内 寝たきりの原因に

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  このシリーズでは、関節外科が専門で関西労災病院(兵庫県尼崎市)副院長の津田隆之さんに聞きます。(聞き手・長尾尚実)

脚の痛み(14)大腿骨の骨折 寝たきりの危険

 これまで変形性膝関節症など病気による脚の痛みについて解説してきました。ここからは主にけがによる骨折が原因となる痛みについて説明します。高齢者にとって一定の運動がなぜ大切なのかを知ってもらいたいと思います。

 高齢者が寝たきりとなる原因に 大腿だいたい (太もも)骨の上部付近の骨折があります。若い人にはほとんどありませんが、40歳を超えてから徐々に増え始め、70歳を超えると急増します。人口10万人当たりの年間発生率は、60歳代で男性51人、女性90人ですが、80歳代では男性574人、女性1478人との統計があり、女性の方がかなり多くなっています。

 高齢者がこの部位を骨折するのは、ほとんどが屋内での転倒時です。転び方に特徴があり、滑るように横向きに体が落ちて、お尻を床に強打します。その際、大腿骨の上端にあって外側に出っ張っている「 大転子だいてんし 」を打ち、近くが裂けるように折れます。激痛があり、ほとんど歩けません。ベッド脇や滑りやすい床で足をとられ、「夜中にトイレに行こうとして、暗くて脚がもつれた」などとよく聞きます。体を起こして歩き始めようとした一歩目が危険です。

 なぜ高齢になると、この部位を骨折しやすくなるのでしょうか。それには加齢による骨密度の低下が関係します。骨密度は40歳代まではほぼ一定ですが、加齢によるホルモンバランスの変化で50歳前後から低下していきます。特に女性は閉経後に急激に低下します。骨がもろくなる骨粗しょう症の状態になるのです。

 こうした骨折を予防するには、骨粗しょう症の治療と転ばないための運動という二つのアプローチが必要になってきます。

津田隆之さん

【略歴】
 津田 隆之(つだ・たかゆき)
 三重県多気町出身。1982年、大阪大医学部卒、90年、同大学院修了。星ヶ丘厚生年金病院(現・JCHO星ヶ丘医療センター)整形外科部長、箕面市立病院医務局次長などを経て、2017年4月から現職。専門は関節外科、骨粗しょう症の疫学。市民向け講演会などで、脚の痛みを起こす病気や治療法、転倒予防について解説している。

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