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認知症治療薬メマンチンがPTSDに有望か 心理療法に匹敵する効果、臨床試験を計画へ

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 災害や暴力など生死に関わる衝撃的な体験をきっかけに発症する心的外傷後ストレス障害(PTSD)。心理療法と薬物療法が治療の柱だが、薬物治療の選択肢は限られており、新たな治療薬の開発が課題となっている。そうした中、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所所長の金吉晴氏、同センター行動医学研究部室長の堀弘明氏らの研究グループは、認知症治療薬であるメマンチンをPTSD患者に投与した臨床試験でPTSDの有意な改善効果を示したと発表した。研究結果はEur J Psychotraumatol( 1月15日オンライン版 )に掲載された。

メマンチンが恐怖記憶のメカニズムに関与

認知症治療薬メマンチンがPTSDに有望か 心理療法に匹敵する効果、臨床試験を計画へ

※画像はイメージです

 PTSDは強い恐怖を感じた場面を何度も思い出し、気持ちが不安定になって不眠に陥るなどして日常生活に支障を来す精神疾患。新規治療法の開発が急務とされている。今回の同研究の共同研究者の1人である東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻教授の喜田聡氏らは、研究に先立ち、マウスの海馬において神経細胞の新生を促すと記憶が忘却されることに着目。記憶忘却効果によるPTSDの改善方法の開発に取り組む中で、マウスにメマンチンを投与すると海馬の神経新生が亢進し、恐怖記憶の忘却が促進され、PTSDに有効である可能性を見いだした。

 メマンチンは、グルタミン酸受容体サブタイプの1つであるN-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗薬。NMDA受容体は恐怖記憶のメカニズムに関与することが明らかになっている。

 この基礎研究の結果を受け、金氏らの研究グループは、性被害、DV、虐待、災害などをきっかけにPTSDを発症した成人女性患者13例にメマンチンを12週間投与し、その効果を検証するオープンラベル臨床試験を実施した。

 13例のうち必要なフォローアップデータが得られた10例のデータを解析したところ、PTSD診断尺度で重症度評価と診断のための自己記入式質問紙(PDS)の合計得点の平均値は、ベースラインの32.3から12週後は12.2に減少し、有意な改善が認められた。うち6例は、PTSDの診断基準を満たさない水準にまで改善していた。

 一方、有害事象としては、睡眠の問題、眠気、鎮静、体重変化、低血圧などが報告されたが、重篤なものは確認されなかった。

既存薬の有効性は30~50%と限界も

 PTSDでは、主な治療法の1つである心理療法のトラウマ焦点型認知行動療法の有効性が示されており、主要な国際ガイドラインで第一選択とされている。有効性が高い一方で、治療者、患者双方の負担は大きく、専門家の育成が困難なため普及が遅れている。

 そこで期待されているのが薬物治療だ。PTSDを適応症として選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のパロキセチン、セルトラリンが承認されているが、有効性は30~50%程度と限界もある。そのため新たな治療薬の開発が喫緊の課題となっている。

 今回の臨床試験の結果について、研究グループは「メマンチンの効果量は、心理療法の1つである持続エクスポージャー(曝露)療法(患者につらいトラウマを思い出させ、治療者と共に苦しみに向かい合い、回復に導く治療法)に匹敵するほど大きく、忍容性もおおむね良好であった」として、今後は同薬を投与した人と投与していない人で有効性を検証するランダム化比較試験を予定しているという。(小沼紀子)

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