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オタマジャクシの遺伝子で脊損治療

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 名古屋大学大学院脳神経外科学准教授の夏目敦至氏らは、再生能力を持つアフリカツメガエルの幼生(オタマジャクシ)の遺伝子から神経再生に有効な神経転写因子「Neurod4」を発見。脊髄損傷モデルマウスの脊髄内の幹細胞にNeurod4を導入することで神経再生に成功したと iScience(2021;24:102074) に報告した。(関連記事「 ヒトもサラマンダーのように手足再生が可能 」、「 イモリの再生能力解明の手がかりに 」)

Neurod4導入でニューロン分化細胞が増加

オタマジャクシの遺伝子で脊損治療

アフリカツメガエル成体
(C)Adobe Stock ※画像はイメージです

 脊髄損傷は重度の後遺症を来す難治性の神経外傷で、これまで治療について多くの研究がなされてきたが、完全に神経を再生することは難しい。脊髄損傷の治療が困難な要因として、哺乳類の脊髄における神経再生能が非常に限られていること、損傷部の傷跡(グリア瘢痕)が神経再生を妨げることが挙げられる。現在、脊髄損傷治療の中心となっているのは再生医療である。

 神経再生能が低い哺乳類の脊髄にも内在性の神経幹細胞は存在しており、その鍵となるのが脊髄内の中心管を囲む上衣細胞である。近年、脊髄損傷後の急性期~亜急性期に上衣細胞の脱分化により神経幹細胞に逆戻りするとの報告がなされた。夏目氏らはこの性質に着目し、上衣細胞から脱分化した幹細胞に神経転写因子を導入することで意図的にニューロンへと分化を誘導できれば、神経再生につながる可能性があると考えた。

 そこで同氏らは、再生能が高いアフリカツメガエルの幼生のRNAシークエンス(RNA-Seq)を実施。その解析から、神経再生にかかわる最も有効な候補遺伝子として神経転写因子「Neurod4」を発見した。また、神経幹細胞に感染性の高いリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)にレトロウイルスの中身を入れたハイブリッドベクターを独自に開発。これにより脱分化した幹細胞に遺伝子導入することが可能になった。脊髄損傷後に「Neurod4」を導入した群(Neurod4群)では、対照群と比べてニューロンに分化する細胞が明らかに増加した。

運動機能が有意に改善

 通常、脊髄損傷後に発生するグリア細胞の1つであるアストロサイトは、グリア瘢痕を形成し神経の軸索再生を妨げることが知られており、グリア瘢痕を形成するアストロサイトのうち半数以上は上衣細胞に由来するとされている夏目氏らがNeurod4導入による星状膠細胞への分化の影響を調べたところ、Neurod4群で分化が著明に減少していた。同氏らは「Neurod4導入により、上衣細胞から脱分化した幹細胞はグリア瘢痕を形成するアストロサイトからニューロンに転換することが示された」と指摘している。

 さらに、Neurod4導入により分化したニューロンの種類を調べたところ、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、運動ニューロンのいずれの神経細胞への分化も認められた。また、それらの神経細胞が下肢機能に関与する運動ニューロンとのシナプスを形成していることも確認できた。バッソマウススケールスコア(9点満点)を用いた運動機能の評価において、Neurod4群は対照群と比べて有意な改善を示した (図)

図.後肢の運動機能

オタマジャクシの遺伝子で脊損治療

(iScience 2021; 24: 102074)

 同氏らは、今回の結果から「Neurod4導入は、幹細胞からニューロンへの分化を促進する一方で星状膠細胞への分化を抑制、その相乗効果により軸索が伸長しやすくなって運動ニューロンとシナプスを形成し、運動機能の改善をもたらしたのではないか」と考察。「Neurod4の他にも有望な神経分化促進因子は多く存在し、効果も期待される。今回の知見は、今後のさらなる研究により神経再生治療において有力な手法となりうる」と展望している。(慶野 永)

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