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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

在宅介護の職員にも新型コロナウイルスのワクチン優先接種を

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在宅介護の職員にも新型コロナウイルスのワクチン優先接種を

 先週、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」がある地元の神奈川県横須賀市から、職員の新型コロナワクチン優先接種のための職員の一覧表の提出依頼がありました。高齢者施設の従事者は、優先接種順位の3番目に位置付けられています。1番目がすでに始まっている医療従事者で、2番目が4月に始まる予定の65歳以上の高齢者。そして3番目が高齢者施設などの従事者です。

 しかし、ホームヘルパー等の在宅介護業務に従事している人たちは、この優先接種の対象に入っていません。優先接種の対象となる高齢者施設とは、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホーム等の、高齢者の入居施設に限定されています。在宅介護事業の従事者は入っていないのです。

 「さくらの里山科」に併設しているショートステイ部門は、同じ建物の中で特別養護老人ホームの職員と一緒に仕事をしている、ということで優先接種の対象に認めてもらいましたが、同じ法人で在宅介護を専門に行っている別施設「さくらの里」の職員は認められませんでした。

 老人ホームで感染が起きると、大規模なクラスター(感染集団)が発生しやすいです。高齢者が1か所に密集して暮らしているためです。しかも、おむつ交換、入浴介助、食事介助などの介護業務は、職員と高齢者が密に接する必要があります。完全な濃厚接触です。だから職員から入居者へ、入居者から職員へと感染するリスクも非常に高いのです。これらの理由により、老人ホームでひとたび感染が始まってしまうと、職員、入居者合わせて数十人、というような大規模クラスターになってしまうことが多いのです。

 従って、大勢の感染を防ぐ、という点では、老人ホームの職員のワクチン接種が重要です。 しかし、ワクチンの優先接種を、高齢者入居施設の職員に限定するのは、感染拡大の防止の観点からは間違っていると思います。せっかく、高齢者と老人ホーム職員に先にワクチンを接種するのに、在宅介護の従事者がワクチンを打っていないのでは、防波堤に穴が開いているような状況です。

密に接する在宅介護の現場

 在宅介護の現場では、個々の高齢者が感染しても、クラスターにはなりません。デイサービスやショートステイなど、高齢者が集まる在宅介護サービスではクラスターが生じていますが、老人ホームに比べればはるかに規模は小さいものです。

 ただし、自宅で暮らす在宅高齢者は、社会との関わりが広いのです。

 老人ホームでクラスター感染が起きた場合、その感染が外部に広がることはめったにありません。今は、ほぼ全ての特別養護老人ホームが、家族の面会を中止しています。「さくらの里山科」でも、月に1回の窓越し面会(家族は建物の外、入居者は中、会話は携帯電話)があるだけで、入居者と家族が直接触れ合うことはありません。この状況では、入居者が感染しても、家族まで感染が広がることはあり得ません。感染が外部に広がる経路は、職員による感染に限定されます。

 一方、在宅高齢者は、もちろん家族と接します。介護している家族は、職員と同様に高齢者と密に接しますから、感染するリスクは極めて高いのです。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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