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サルコペニア…加齢で筋力低下 いすから立ったり座ったり「5回で12秒以上」かかるなら
加齢などにより筋肉量が減り、全身の筋力が低下した状態を「サルコペニア」といいます。転倒や骨折のリスクが高まるだけでなく、生活習慣病など様々な病気につながることもあります。新型コロナウイルスの感染拡大で外出を控えることが多くなった高齢者は特に注意が必要です。(浜中伸之)
フレイルの一因
サルコペニアはギリシャ語で筋肉を意味する「サルコ」と喪失を表す「ぺニア」を組み合わせた造語です。医療や介護に頼らず日常生活が送れる健康寿命を考える上で注目されています。
筋肉は古いものが壊れる「分解」と、新しいものが作られる「合成」を繰り返します。しかし、運動や栄養が不足すると、分解が合成を上回り筋肉量が減少します。筋肉量は30歳頃をピークに毎年1~2%程度減少すると言われています。
サルコペニアには加齢が原因の一次性、加齢以外による二次性があります。二次性の原因には、寝たきりや運動をしない生活習慣、心臓や肺などの重い病気、栄養不足などがあります。
筋肉量が減ると、体のバランスを保つ力が衰えて転倒しやすくなり、骨折の危険性が高まります。糖の代謝を調整する機能にも影響し、血液中の糖が増え糖尿病のリスクも高まります。
さらに、のどの筋肉がやせ細り食べ物をのみ込む 嚥下 機能が低下することもあります。栄養状態の悪化で免疫が低下し感染症にかかりやすくなります。要介護になる一歩手前の状態「フレイル(虚弱)」の一因になるとみられています。
日本サルコペニア・フレイル学会の診断基準では、▽握力が男性28キロ未満、女性18キロ未満▽いすから立ったり座ったりを5回繰り返すのに12秒以上かかる――のどちらかの場合、サルコペニアの疑いがあります。
検査装置を備えた病院で筋肉量を調べ、一定の数値より低いことが確認されれば、サルコペニアと診断します。体力の低下など気になる点があれば医療機関に相談することが大切です。
たんぱく質と運動
予防には適切な食事と運動で筋肉量を増やすことが重要です。食事は筋肉をつくるたんぱく質をしっかりと取ります。肉や魚、牛乳などの動物性たんぱく質と豆類などの植物性たんぱく質のバランスも大切です。ビタミンDを一緒に摂取すると、筋肉量がより効率的に増えます。ビタミンDを多く含む魚やキノコ類なども加えるとよいでしょう。
サルコペニア外来がある関西医科大学病院(大阪府枚方市)では、たんぱく質がどの程度足りないか、尿検査で調べられます。
筋肉量を増やすには、運動の際に十分な栄養を取ることが必要です。スクワットや座った状態から立つことを繰り返す運動、ダンベル体操などの筋トレを週2回程度行うと効果があります。コロナ禍で自宅に閉じこもり運動の機会が減っても、家の中で可能な範囲で体を動かしましょう。
同病院健康科学センター長の木村 穣 さんは「筋肉量が減っても内臓脂肪は多い『サルコペニア肥満』も近年注目され、寝たきりになるリスクが高まるとの報告もあります。大きな病気につながる前に、計画的な運動や食事の指導が受けられる施設に相談してください」と話しています。
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