スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす
医療・健康・介護のコラム
プロアスリートらの故障でよく聞く半月板。それが円板状ってどういうこと︖
新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。感染の拡大が早く収束し、安心して生活できるようになることを祈ります。また、スポーツにとっても、よい環境が戻ってくることを願います。今回は、私が専門にしている膝、半月板の話です。
Iさんは、小学生の時からフェンシングを習っていました。高学年になると、時々、右膝の引っかかるような感覚がありましたが、大きな問題はなく、競技を続けてきました。大学生になり、膝を曲げて踏み込みこんだ際、右膝が腫れて痛みが出て、完全に伸ばすことができない状態になりました。医療機関で膝のMRI(磁気共鳴画像)撮影を行い、半月板の形が元々大きく、損傷していると言われました。
膝のクッションになる半月板
「半月板」という言葉は、著名なプロアスリートの故障のニュースなどで聞いたことがあると思います。しかし、半月板が実際に何なのかはイメージしづらいかもしれません。
イラストのように、膝の関節を構成する大腿骨と脛骨の端は、軟骨で覆われています。いわゆる「軟骨」とは、厚さが数ミリの組織で、立っている時に荷重を受ける部分です。また、関節の曲げ伸ばしをスムーズに行えるよう、表面は非常に滑らかになっています。半月板は 大腿骨 と 脛骨 の軟骨の隙間にある組織で、これも実は軟骨の一つです。荷重がかかった時に、脛骨の軟骨に加わる圧力が均等になるように分散させる機能を持ちます。

半月板は内側と外側に2つあり、むしろ三日月のような形をしています。一般的には、イラストの左側のような形状をしていますが、右のように外側半月板が元々大きいケースがあり、これを円板状半月と呼びます。日本人を含めたアジア人に多いと報告されています。円板状半月の形をしているだけでは無症状で治療は不要ですが、通常の半月板よりも損傷しやすいと言われています。

加齢とともに徐々に傷んでくる半月板ですが、膝を 捻 るなどの外力により損傷することもあります。ただ、傷んだら治療が必要というわけではなく、損傷の状態によっては、安静やリハビリテーション、内服や注射などの保存加療で症状が落ち着くことも多く、その場合は様子を見ます。しかし、半月板損傷による症状が改善しない場合や膝が伸びない場合などでは、手術が選択肢になります。

手術を行う場合、損傷した半月板を修復するのが一番です。しかし、半月板は血流が豊富な組織ではないため、修復しても治癒しないケースが多く、半月板切除術が主に行われてきました。最近のデータでも数多く行われています。半月板切除といっても、損傷している場所を部分的に切除するのみなので、多くの場合、症状の改善が得られます。しかし、切除した半月板の量、O脚・X脚の有無、体重、筋力といった要素によっては、時間経過とともに軟骨の摩耗が進み、変形性膝関節症に至ることがあります。

近年では、可能な限り半月板を温存する方向に治療がシフトしています。修復が困難な場合は最小限の部分切除を行いますが、できるだけ修復を試みます。また、医療機器の進歩により半月板修復も行いやすくなっています。円板状半月板の場合、半月の形になるよう中心部分を切除し、残した半月板の損傷部分を修復します。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。