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がん患者団体のリレー活動報告

医療・健康・介護のコラム

一般社団法人キャンサーペアレンツ

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 国立がん研究センターの2015年の調査によると、小さなお子さんを持つがん患者は毎年約6万人いると言われ、その数は増え続けています。30~50歳代を中心とする働き盛り世代・子育て世代は、「がん」という病気をカミングアウトしづらい環境におり、生きにくさを抱え込んでいるケースが多くあります。

 「同じ境遇の方に出会い、仲間ができることで、気持ちが楽になる」「孤独感から解放され、これからの闘病に希望が持てるようになる」「少しずつでも前向きになり、これまでできなかった、新たな一歩を踏み出せるようになる」――。キャンサーペアレンツは、会員の皆様にそんな気持ちを持ってもらえる場でありたいと思いながら活動を続けています。

一般社団法人キャンサーペアレンツ

「キャンサーペアレンツの集い(オフ会)」で活動を報告する創設者の西口洋平さん(右奥)。会のコンセプトは「つながりは、生きる力になる」(2019年11月)

子育て中のがん患者の孤独

 キャンサーペアレンツの創設者である西口洋平さんが2020年5月に亡くなられました。西口さんは2015年2月、35歳の時に、ステージ4のがんの告知を受けました。頭の中が真っ白になり、何も考えることができませんでした。家族や友人、職場の同僚などの支えで日常生活に戻ったものの、大きな孤独感を抱えながら、手探りの日々でした。

 同世代のがん体験者が周囲におらず、相談できる人がいませんでした。「孤独を感じながら闘病しているのは、自分だけではないはず」と、子どもを持つがん患者でつながれる「キャンサーペアレンツ」のサイトを16年4月に立ちあげました。

 週に1度の通院による抗がん剤治療を受けながら会社で働き、一方で、キャンサーペアレンツの活動も行ってきました。西口さん旅立ち後も、生前、彼が発信していた「みんなでつくるキャンサーペアレンツ」の思いのもと、現在は会員のみなさまにもご協力いただきながら、日々活動しています。

サイトの「日記」に質問や相談を共有

 キャンサーペアレンツに コミュニティーサイト から登録すると、同じ境遇の方を探して交流することができ、また、日々の思いを日記としてつづることができます。

 「子どもにがんのことをどのように伝えましたか?」「職場には伝えましたか?」「おすすめのウィッグはありますか?」――。日記には、生活の様々な場面における質問や相談があふれています。「子どもの入学式に出ることができました!」「誕生日を迎えることができました!」といった日々の出来事の共有もあります。

 日記にコメントをして同じ境遇の方同士のやり取りが始まる場合もあれば、閲覧や情報の検索でご活用いただいている方もいらっしゃいます。会員のみなさん一人ひとりがご自身にあった使い方をしていただくことで、訪れたい時に訪れられる場所、ほっとできる場所の一つとしてキャンサーペアレンツがあり続けられたらと思っています。

 コミュニケーションツールは日記の投稿だけではありません。「日記を投稿してくれてありがとう」「思いを伝えてくれてありがとう」と日記へのリアクションを示す「ありがとう」ボタンと、仲間へのエールを届ける「応援します」ボタンがあります。「同じ境遇の方からの感謝や応援はとても大きな力になっています」とたくさんの反響が寄せられています。

オフ会やオンライン交流会も

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「キャンサーペアレンツの集い(オフ会)」ではワークショップがメイン。会員からたくさんの「声」が発信される(2017年4月)

 基本的にはサイトを通しての交流がメインですが、実際に会うことで、つながりをより深めることができる「キャンサーペアレンツの集い(オフ会)」を東京、大阪、名古屋、福岡で定期的に開催してきました。

 キャンサーペアレンツの集いでは、お子さまもご参加いただけますので、子ども同士のつながりも生まれます。対面のイベント開催が難しい現状、「今だからできること」として、オンライン交流会開催の取り組みもスタートしました。オンラインだからこそ、どこに住んでいても参加できるという良さは継続しつつも、対面イベントの開催ができる環境になれば、これまでの開催地のみならず、各地での「キャンサーペアレンツの集い」開催の実現に向けて、動きたいと考えています。

絵本から始まるコミュニケーション

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絵本「ママのバレッタ」原画展と読み聞かせイベントを行った「ARTriangle2020 えほんの塔」(2020年10月、大阪)

 親が自分のがんについて子どもたちにどのように伝えるべきか、というのは共通した悩みです。そこで、キャンサーペアレンツ会員の声から「えほんプロジェクト」が生まれました。経験を生かした絵本を制作・活用することで、がんについて子どもとオープンにコミュニケーションできるきっかけを生み出せたらと思っています。がんになっても子育てしやすい、生きやすい社会になることを願いながら活動を始めました。

 えほんプロジェクト制作第1弾作品「ママのバレッタ」(絵と文・たなかさとこ、生活の医療社)が完成し、2018年11月に出版しました。抗がん剤で脱毛した母とのやりとりを、ユーモアを交えながら娘の目線で描いた「闘病記」ではない「日常の物語」です。

 絵本では伝えきれなかった思いを届ける原画展を19年8月に東京で開催しました。それをきっかけに、静岡、岐阜、大阪、兵庫、愛媛、長野と原画展の輪は今も広がっています。私たちが足を運ぶことができない状況でも、えほんプロジェクトの活動に賛同してくださった皆様のおかげで、原画展を開催し、原画を通して絵本に込めた思いを届けることができました。がんと向き合っている方のみならず、今はまだがんが身近ではない方にも、がんのことを知り、理解を深めるきっかけになっています。

 ちなみに、このプロジェクトには2019年度、正力厚生会の助成をいただきました。

「つながりは、生きる力になる」

 「つながりは、生きる力になる」。これは、キャンサーペアレンツ創設者で故人となられた西口さんが考える会のコンセプトです。

 同じ境遇の方とつながることで思いを共有し、「ひとりじゃない」と感じられることが、生きる力となります。そして、思いを「声」として発信し続けたら、がんと向き合いながらも生きやすい社会が実現すると思います。

 がん患者さん同士がつながり、そして、社会ともつながる。この時、「支えられる」「支えてあげる」の関係性ではなく、「お互いさま」の関係性が大切です。「みんなでつくる」社会に向かって、これからもキャンサーペアレンツは活動し続けていきたいと思っています。

一般社団法人キャンサーペアレンツ

 キャンサーペアレンツのフライヤー(チラシ)。病院や患者サロンなどに置いていただける場合はぜひご連絡ください(クリックすると拡大します)。

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 子どもを持つがん患者の方が同じ境遇の方と交流できるコミュニティーサイトとして2016年4月に誕生。同年9月に一般社団法人化した。オンラインコミュニティーのため、いつでもどこにいてもつながりを持つことができる。会員数は2021年1月現在3900人を超え、全国47都道府県から海外までつながりは広がっている。会員の平均年齢は約45歳。

 主な事業内容は、コミュニティーサイト「キャンサーペアレンツ~こどもをもつがん患者でつながろう~」の企画・開発・運営、子育て世代や就労世代のがん患者の情報発信、イベントやセミナーなどの企画・運営・協力、「がん教育」「がんと就労」「がんと生活」などにかかわる各種情報提供など。

コミュニティーサイト「キャンサーペアレンツ~こどもをもつがん患者でつながろう~」 https://cancer-parents.com/

法人ホームページ  https://cancer-parents.org

 このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。

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公益財団法人 正力厚生会

 正力厚生会は1943年(昭和18)に設立され、2009年に公益財団法人となりました。「がん医療フォーラム」の開催など、2006年度からは「がん患者とその家族への支援」に重点を置いた事業を続けています。
 現在は、医療機関への助成と、いずれも公募によるがん患者団体への助成(最大50万円)、読売日本交響楽団弦楽四重奏の病院コンサート(ハートフルコンサート)を、事業の3本柱としています。
 これからも、より質の高いがん患者支援事業を目指していきます。
 〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル29階
 (電話)03・3216・7122   (ファクス)03・3216・8676
  https://shourikikouseikai.or.jp/

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