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医療・健康・介護のコラム
日本脳炎ワクチンが足りず予防接種に影響……どうすればいい?
夏場にお勧めの虫よけ剤は?
日本脳炎は、最初にお話ししたとおりコガタアカイエカという蚊に刺されることで感染します。したがって、予防接種以外の感染予防としては蚊に刺されないことです。
コガタアカイエカは水田や沼地などの大きな水たまりに産卵する性質があり、暑い日中より日没以降から活動が活発になるため、日没以降に外出する際には虫よけ剤を使うことが有効です。皮膚の露出が少ない服装も効果的でしょう。
特にこの蚊は7~8月に活動が活発になり、また蚊の移動範囲は水田や沼地から10~30km程度とされています。いっぽう「30kmという距離には根拠がないが、少なくとも10km程度は移動しうるだろう」という見解もあります(1)。
具体的な蚊よけの選択として、「イカリジン」や「ディート」の成分の虫よけ剤がお勧めです。特にイカリジンはディートと違って子どもの場合でも塗る回数に制限がないので使いやすいです。15%濃度のものを使うと6~8時間有効なので便利です。なお、手作りやアロマなど植物由来の虫よけが最近人気ですが、これらは効果が20分ほどしか持続しなかったり、医学的に十分な効果が証明されていなかったりするためお勧めしません。同様に薬剤をしみこませたリストバンドや超音波を発するタイプ、リング型やシール型も明確な効果は証明されておらず、アメリカ小児科学会もお勧めしていません(8)。
これらの虫よけについて、くわしくは以前書いたヨミドクターの記事「 子どもとアウトドア 野山にはキケンな虫もいっぱい…安全な虫よけの使い方知ってますか? 」をご参考にしてください。
おそらく2021年の後半にはワクチンの流通も回復すると思われますし、蚊に刺されやすくなるのは7~8月とまだ少し先です。そこまで焦る必要はないかと思いますが、これを機に日本脳炎やワクチン、そして虫よけ対策についても整理する機会になればと思っています。(坂本昌彦 小児科医)
<参考文献>
(1) 国立感染症研究所「日本脳炎 疾患情報 」
(2)国立感染症研究所「2015年夏に千葉県で発生した日本脳炎の乳児例」IASR 38(8)(No.450),Aug 2017
(3)日本ワクチン産業協会 予防接種に関するQ&A集「日本脳炎」
(4)国立感染症研究所 「年齢/年齢群別の日本脳炎抗体保有状況、2019」
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/yosoku/2019/Seroprevalence/je2019serum.pdf
(5)乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン ジェービックV添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/631340ND1022_2_25/
(6)厚生労働省「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの定期の予防接種に係る対応について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000720641.pdf
(7)国立感染症研究所 「日本脳炎ワクチン接種歴別の年齢/年齢群別日本脳炎抗体保有状況、2017年.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/y-graphs/8282-je-yosoku-serumvac2019.html
(8) American Academy of Pediatrics. Choosing an Insect Repellent for Your Child
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